現在、別の仕事に就いている社会人が医師の道を目指し医学部に入ることを模索する動きが活発化している。麻酔科医の筒井冨美氏は「コロナ禍の影響で2021年度の試験は一部の出題問題が易化される予定ですし、在宅ワークなどで社会人が医学部受験予備校のオンライン授業を受けやすくなりました。また年約200人の学士編入枠や、同窓会枠などを利用すれば合格のチャンスも増える」という――。
ハンガーにかかった医療用スクラブと聴診器
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コロナ禍でなぜか医師を目指す社会人が増えている

先日、いちど薬剤師となった後に医学部再受験に成功した知人の医師がこんな話をしてくれた。

「昔から、医学部受験にチャレンジしたい社会人から相談されることが多いのですが、2020年はその件数が過去最高でした」

医学部受験専門予備校の関係者に聞いてみると、「医学部受験の説明会に参加する社会人が目立つ」と述べた。

目下、コロナ感染者の増加で医療の最前線は疲弊している。医療崩壊の危機に瀕する感染者の入院を受け入れる病院はもちろん、受け入れていない病院も「長期間のコロナ対策」「高齢者の受診控え」などにより、経営環境が悪化しているところが多い。

2020年は、医師や看護師など医療現場の過酷さや病院経営の難しさにフォーカスがあたった年だったが、そうした苦境に立たされている世界に飛び込み、自分も人命を救う力になりたいという献身力の高い社会人が少なくないのだ。

そこで今回は「医学部受験にチャレンジして、人生の新しいページを開きたい」社会人に向けたアドバイスをしたい。

2018年の東京医大騒動で、社会人受験生の門戸が広がる

2018年、東京医科大学における文部科学省関係者の不正入試を発端に、大規模な女性受験者や高齢(多浪)受験者の減点が発覚し、連日トップニュースをにぎわせる大騒動となった。

一連の不正入試の反省から、同年秋には全国医学部長病院長会議が「性別や年齢による入試差別を禁止」する「大学医学部入学試験制度に関する規範」を公表している。要約すると以下のとおりである。

・男女差別:厳禁
・年齢差別:厳禁
・内部進学、同窓会枠、推薦、帰国子女、学士入学:予め要件を明示すれば容認
・地域枠(出身地による加点):予め要件を明示すれば容認、また地域枠内の明示された年齢制限は容認

その結果、それまで10年以上、医学部生の女性率は30~35%未満で推移してきたが、2019年度には37.2%に増加した。年齢差別についても文科省は追跡調査を行い、「前年に比べて2019年度には改善された」と調査結果を公表している。2020年以降も同様の追跡調査が行われる予定なので、今後の大規模な減点入試は不可能だろう。