オランダではコロナ対応で支持された内閣が辞職

ヨーロッパに目を向けても、新型コロナウイルス対応に関連した政争が年明けから激化している。口火を切ったのがオランダである。オランダの場合、与党・自由民主国民党(VVD)の支持率は新型コロナ対応が評価される形で40%弱まで上昇、第2位の極右政党・自由党(25%弱)を引き離すことに成功した。

今年3月17日までに予定されている総選挙でも、与党VVDは議席数を増やすと見込まれている。ところが1月15日、10年にわたりオランダを率いてきたルッテ内閣が突然総辞職した。2013~19年に約1万世帯が受給した児童手当に不正があったとして、税務当局が不当に返還させていたことの責任を取った形だ。

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実際にそうした不正はなく、また標的にされた世帯の多くが移民の家系であったため、この問題は人種差別的な性格をはらんでいた。ダメージを最小限に食い止めるため、ルッテ首相が引責辞任という形で一度けじめをつけ、3月の総選挙を乗り切って政権を維持する選挙戦術に出たことは明らかである。

3月の総選挙まで、ルッテ首相は暫定内閣を率いて新型コロナ対応などの職務を続けることになる。当然、野党を中心にルッテ首相による政治パフォーマンスには非難の声が浴びせられている。とはいえルッテ首相は、新型コロナ対応に対する有権者の好評価を武器に、強気のスタンスを維持している。

イタリアでは「壊し屋」が本領を発揮

イタリアでは連立政権が崩壊の危機に直面した。コンテ政権が1月12日に閣議を開き、欧州連合(EU)が各国の経済復興を後押しするために創設した復興基金からの支援を基にした新型コロナ復興計画予算案を閣議決定した。しかしこの内容に、連立政権に参加する少政党「イタリア・ビバ」の党首、レンツィ元首相が反対したのだ。

レンツィ元首相は「壊し屋」の異名を持つ。かつては中道左派の名門政党・民主党に属していたが、内部分裂の末、2019年に離党してイタリア・ビバを立ち上げた。左派連立政権となった第2次コンテ政権に参加したが、コンテ政権による復興計画案が不十分であるとしてレンツィ元首相は閣僚2名を引き揚げ、連立から離脱した。