英国とEUの土壇場での通商合意、有権者の反応は…
2020年のクリスマスイブ、欧州連合(EU)との間で通商交渉の合意に達した英国のボリス・ジョンソン首相は高らかに勝利宣言を行った。1月末にEUから離脱し、公約通りに年内に移行期間を終了するとともに、英国が望んだ形で自由貿易協定(FTA)を勝ち得たと満面の笑みで英国民に対してアピールを行った。
とはいえ、直後の12月28日に行われた世論調査会社ユーガブの調査によると、ジョンソン政権の支持率は31%だった(図表1)。前回12月20日時点に実施された調査からの上昇幅は、わずか4%ポイントにすぎなかった。ジョンソン首相のアピールにもかかわらず、英国の有権者の評価は厳しかったと言わざるを得ない。
保守党の支持者の多くがFTAの締結を望んでいたこともあり、仮にノーディールだったならジョンソン政権の支持率はさらに低下したはずだ。ノーディールでも構わないと強弁を張っていたジョンソン首相であるが、結局のところその真意は、何としても交渉の合意を実現することにあったと考えられる。
それに歯止めがかからない新型コロナウイルスの感染拡大もまた、FTA交渉の合意に皮肉ながら貢献した。11月以降、英国では厳しい制限措置が再開され、一時的に1日当たりの感染者数は減少した。しかしクリスマス前から感染力が強い変異種が猛威を振るい、1日当たり感染者数は過去最多を更新し続ける状況が続いている。
接種が開始されているワクチンに関しても、従来は1回目の接種から3週間後に2回目の接種を受ける方針であったのが、それを最大で3カ月後に変更し、1回目の接種を優先する方針に転換した。ワクチンの接種戦略をより「広く薄く」したわけだが、そうせざるを得ないほど、英国の感染状況は深刻を極めている。
そして1月4日には、イングランド全土で3回目となる都市封鎖(ロックダウン)が実施される運びとなった。最短でも2月15日まで、イングランドでは厳しい制限措置が行われる。医療崩壊を防ぐための措置だが、度重なる規制の強化を受けた人々の疲労は計り知れない。