感染対策で相当挽回しない限り、そして急激な景気回復を実現でもしない限り、ジョンソン首相が率いる与党・保守党には相次ぐ地方選で有権者による厳しい評価が突き付けられそうだ。そうなると、任期満了の場合で2024年5月2日までに予定されている総選挙でジョンソン保守党が大敗するシナリオが現実味を帯びてくる。
移行期間までは、仮想敵国としてEUを非難することで有権者の不満を多少は和らげることができただろう。しかし20年12月で移行期間を打ち切り、年明けから新協定に基づく通商関係に移行したことで、そうした方便は使えなくなった。ジョンソン政権は今後、より厳しい有権者の目に晒されることになる。
英国もまた決められない政治に突入か
二大政党制である英国の場合、保守党の敗北は労働党の勝利を意味する。しかし労働党も一枚岩ではなく、EUとの関係改善を模索する動きもある一方、距離を置くべきだという意見も根強い。党としてのスタンスにまとまりを欠き残留派の票を集めきれなかったことが、前回19年12月の総選挙での敗北にもつながっている。
余程の神風が吹かない限り、次回の総選挙でジョンソン保守党が政権を維持することは難しそうだ。一方で、政党としてのまとまりを欠いている労働党が政権をうまく担えるかも定かではない。EU離脱に続き新型コロナウイルスの感染拡大というイベントが拍車をかけるかたちで、英国もまた決められない政治に突入したと言えよう。
政治の不安定はその国のカントリーリスク(投資対象国・地域の政治経済的な環境変化に伴い資産の価値が下落するリスク)の高まりにつながる。日系も含めたグローバル企業の英国進出は当面、見送られる展開が続きそうだ。当然、通貨ポンドの価値もまた低下を余儀なくされるというのがメインシナリオになるだろう。