息子が母親を父親と奪い合う関係

また、シンジとゲンドウが一緒に墓参りをするシーンでは、母ユイの墓前で「綾波、そこにいるのか」(心の声)とつぶやき、その直後「綾波を……、母さんを、何をするつもりなのさ、父さん!」とゲンドウに言います。「綾波=ユイ」であることをシンジは勘付いていたようです。妻の現身であるレイに理想の女性ユイを重ねるゲンドウ。そして、母とうり二つの女性、レイに恋心を抱くシンジ。父親と母親を奪い合う構図は、エディプス・コンプレックスです。

シンジ、レイ、ゲンドウの三者関係を「三角関係」と考察する人もいますが、エディプス・コンプレックスと考えると、非常に腑に落ちるのです。

自分の考えも言えない内気でネガティブな少年・シンジが、厳格な父ゲンドウと対立、葛藤しながら、成長していく物語。主要な登場人物のほとんどが、父性、または母性の問題を抱えている。『エヴァ』は、家族の愛情、父性、母性の重要性、特に「父性」に大きくフォーカスを当てた、はじめての本格的「父性アニメ」として、エポックメイキングな作品と言えるでしょう。

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