●赤木リツコ

ネルフの技術開発部に属する科学者で、エヴァンゲリオン開発責任者。その母ナオコは、同じネルフの科学者で、スーパーコンピューターシステム「MAGI」の開発者。母の「女手一つで育てた」「ずっと放任で育てた」のセリフから、父親は不在で、母も仕事中心で娘に母親らしいことはしていないと考えられます。

この母子のやりとりの場面は、一見親しげに見えるものの、その関係はかなり微妙です。実は、母はゲンドウと愛人関係にありましたが、捨てられたショックから「MAGI」完成直後に自殺します。娘は母の後を継ぎ、「MAGI」の管理・運営担当者となりますが、彼女もまたゲンドウの愛人となるのです。

母を自分のライバルとみなし、その愛する者を奪いとり自分のものにする。エレクトラ・コンプレックスと見ることもできます。これはエディプス・コンプレックスの女性版です。女児が父親に対して独占的な愛情を抱き、母親に対して強いライバル心を燃やす心理を指します。良好な母娘関係なら、こうはならないはず。科学者としての母は尊敬する一方で、女としての母を憎んでいたことが疑われます。

●綾波レイ

エヴァ零号機のパイロット。無口で無表情、感情をほとんど表に出さない少女です。基本的に他人に興味を示しませんが、シンジには徐々に心を開いていきます。彼女の出自自体が、『エヴァンゲリオン』の重要な謎の一つになっていますし、一言では説明できないので、後で詳しく述べます。

これでわかるように、主要な登場人物は、父性不在、母性不在の問題を抱え、父性愛、母性愛が著しく欠除した環境で育ち、さらに母親、または父親を自殺か事故死で失っているのです。