テーマを探し出すことが文章執筆の第一歩

この仕組みの本質は、多くの人がこれまでやってきたことですが、新しい技術の助けを借りて明示的な仕組みとすることにより、「アイディア製造工場」といってもよいようなシステムを作ることが可能になるのです。これによって、魔法のように本を書き上げることができるようになりました。新しい技術の助けを借りた仕組みを用いれば、書籍のテーマさえ半ば自動的に設定されます。

野口悠紀雄『書くことについて』(角川新書)

既存の多くの「文章読本」は、文章をいかに正しく、読みやすく、印象に残るように書くかを論じています。たしかにこれらは重要なことですが、何もないところから文章を書き上げていくには、「テーマをいかにして探し出すか?」、「アイディアを逃さずに保存するにはどうしたらよいか?」、「それらを組み上げていくには、どのようにするか?」といった作業をより重視すべきです。

書籍のテーマが、あらかじめ決まっている場合には、執筆は比較的楽です。しかし、実際には決まっていない場合が多いでしょう。こうした場合に重要なのは、伝えたいメッセージを見いだすことです。「テーマを探し出すこと」が、文章執筆の第一歩です。

テーマは、基本的には「考え抜く」ことによってしか見いだせませんが、ここでは補助する仕組みを提案します。とくに重要なのは、「クリエイティング・バイ・ドゥーイング」、すなわち「とにかく始める」ことです。

適切なテーマと問題設定ができれば8割はできた

文章執筆においては、「何について書くか?」、「何を目的にするのか?」という「テーマの選択」、あるいは「目的の選択」こそ、最も重要です。適切なテーマが見つかり、問題を設定できれば、仕事は8割はできたといっても過言ではないでしょう。

物書きにとって、「テーマ」とは金鉱のようなものです。それをうまく探し当てられれば、そこを採掘することによって、大量の金を掘り出すことができます。

逆にいえば、金脈がないところをいくら掘っても、金は掘り出せません。採掘の努力は徒労に終わるのです。金鉱は、地表からはなかなか見つかりません。大量の金が埋蔵されている金鉱を見いだすことは、物書きにとって、最も重要なことです。