大手が参入し始めたのはコロナ以前からで、売り手にとって魅力度が高いのだ。

「まず、唐揚げに使う鶏肉は原価率が圧倒的に低い。一般の人が買うスーパーでも実感するでしょうが、大量に使う業務用はもっと違います。調理も簡単で、調理経験のないアルバイトでも、コツを覚えれば入店初日からできるほどです。専門店で持ち帰りだけなら店舗面積も小さくてすむので、出店コストも抑えられます」(稲田、小倉両氏)

飲食店の経営指標の1つに「FLRコスト」がある。「F」はフードコスト(原材料費)、「L」はレイバーコスト(人件費)、「R」はレンタルコスト(地代家賃)で、ビジネスとしては「FLRコスト70%未満」が理想といわれる。唐揚げ専門店はやり方次第で、FLRコストを下げられる業態なのだ。

牛肉や豚肉に比べて食べられない人が少ない

「唐揚げ市場」は今後の拡大も予想される。

民間の市場調査会社「富士経済」が発表したデータでは、2019年の唐揚げ市場は853億円で前年比141%の大幅な伸び。2020年(見込み)は1050億円(対前年比123.1%)とさらに伸長する見通しだ。

急拡大し、参入プレーヤーも増えた「唐揚げ」に死角はないのか。

「中長期的には、食材として安泰だと思います。鶏肉は安いだけでなく、おいしさやヘルシーさで好感度イメージが高まりました。唐揚げが苦手な人は少ない。日本在住の外国人も手にしやすい。牛肉や豚肉に比べて鶏肉は、宗教や信条で食べられない人がいる割合が低い食材でもあります」(小倉氏)

「手を広げずに深めるという意味でも、結局『専門店が強い』と感じています。余談ですが、最近の唐揚げ弁当には“潔さ”もある。メインの唐揚げ以外に具なしのポテトサラダや数えられる程度のスパゲティしか入っていないものもある。これを消費者が支持し続けるのかも注視しています」(稲田氏)

食を生活文化の視点でも考察する筆者は、これまで「食ブーム」と呼ばれた現象を思い出しながら考えた。

メディアが取り上げて話題となった“ブーム”のうち、「ステーキ」(肉ブーム)や「ラーメン」などは専門店が林立して一部は淘汰されたが、食生活としては健在だ。一方「タピオカ」は、食文化の位置づけも道半ばとなっている。

戦後の高度成長期以降に定着した食材は強いのだ。その視点でも「唐揚げ」は底堅い。ブームはいつか終焉するが、間口は広がり、楽しみ方も増しそうだ。

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