「3要素」をすべて満たす企業を選ぶ

ここで私が紹介したい企業選択の手法は「構造的に強靭な企業」というコンセプトで、以下3つの要素をすべて満たす企業です。

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1.高い付加価値:その事業は人にとって必要なのか

そもそもその企業が営む事業が顧客や社会から求められていない、付加価値のないものであれば、その企業には存在意義がないと言えます。言い換えるなら、顧客の抱えた問題を解決するところに企業の存在意義があると言えます。

例えば世界最大のスポーツシューズ企業であるナイキ社は、さまざまなアスリートのニーズに応えるべく新たなコンセプトのスポーツシューズを世に出してきました。古くは「エア・ジョーダン」から、最近ではマラソン選手の8割以上が履いているピンクの厚底シューズ「ヴェイパーフライ」まで枚挙にいとまがありません。

この「ヴェイパーフライ」は靴底にカーボンプレートを埋め込むことで反発力を増し、アスリートの体力消耗を軽減することに成功しました。このようなイノベーションを絶え間なく行う組織的な取組みが同社ではなされています。

2.圧倒的な競争力:競合相手に勝てるのか

上記の「高い付加価値」を満たす企業であったとしても、同等の付加価値を生み出すことのできるライバル企業が多数存在したり、新規参入が容易であったりとすると、その企業は長期的に利益を生み続けることはできません。「その企業にはもうかなわない」と思わせる何か、すなわち新規参入を思いとどまらせる「参入障壁」が必要なのです。

高い付加価値、圧倒的な競争力、そして長期潮流……

例えば、前述のナイキ社が築き上げている参入障壁とは何でしょうか。ナイキ社、アディダス社のようなスポーツシューズメーカーは、有名アスリート用に製品を開発し、それを使ってもらうことで、一般の人たちに「あのシューズを履けば大坂なおみさんのようなショットが打てる」と思わせる広告戦略を採ります。

この広告戦略を「エンドースメント」というのですが、これを含めた広告宣伝費にナイキ社は年間4000億~5000億円、実に売り上げの10%以上を投下していて、この規模でエンドースメントができる企業は世界中見渡しても他にアディダス社くらいしかありません。これは世界シェア3割、米国シェア4割を持つナイキ社だからこそできる「構造」なのです。