アンダーアーマーのような新興企業は、一時は非常に素晴らしい業績をあげ、株価も急上昇したものですが、今では見る影もありません。同じ戦い方をしていては、勝てない構造になっているからだという仮説を私は持っています。

3.長期潮流:長く続くのか

そしてどんなに高い付加価値をもち、圧倒的な競争力があったとしても、産業そのものが縮小している場合、その企業は長期的に利益を生み続けることはできません。私がここで取り上げる長期潮流とは、多くの株式投資家が大好きな「人工知能(AI)」や「自動運転」のような「成長ストーリー」ではありません。

そんなものは証券会社の人が株式を売買させるためのテーマにすぎず、長期投資家にとってなんの利益ももたらしてくれないばかりか、損害を与えるものであるとすらいえます。私にとっての長期潮流とは、「人口動態」のような不可逆的な性質をもっているものです。

ナイキ社の例でいうなら、「人は健康に長生きしたい」という欲求は、人間が太古の昔から本来的に持っているものであり、だからこそ先進国におけるマラソン人口は増え続けているのです。世界の人口は現在77億人ですが、これからも不可逆的に増加します。

それに加えて、途上国が急速に中産階級化することも明示的な長期潮流です。つまり、増加し続ける世界人口の中で、全人口増加以上のペースでアスリート人口が増え続けることはほぼ間違いはないのです。これこそが、付加価値、競争優位を持っているナイキ社にとっての強い追い風になっていると考えます。

構造的に強靭な企業

以上3つの条件が重なったビジネス、企業を一度みつけてしまったら、株式の売買などする必要はありません。株式を保有することでオーナーになればよいのです。

感染症、地震、地政学リスクは好機になる

もしあなたが選んだ「構造的に強靭な企業」があなたの見立て通りならば、その企業はあなたが会社で働いている間もベッドで寝ている間も、休むことなくオーナーであるあなたのために利益を生み続けてくれるでしょう。そして、長期的に見れば企業の株価はその利益を反映する形で上昇します。

たとえ少々時間はかかったとしても、あなたが投じたお金は世界中の人々の問題を解決し豊かにしたうえで、より大きくなってあなたの元にもどってくるに違いありません。たしかにこれからも感染症、地震、地政学リスクなどをうけて中短期的には株価は下がるかもしれませんが、それはまさに素晴らしい事業を安く手に入れる絶好の好機なのです。