デーモン閣下に「へヴィメタってなに?」と聞く力

【サロン参加者A】知らないから教えてほしいとか、相談したい、というアプローチもありですか?

【吉田】いいですね、それも使えます。知らない→教えを受けたい、という流れを頭に入れておくだけで、いつでも使える武器になりますよね。

私は、「あっ!」や「えっ?」の使い方と同じように、「何ですか? それ」という切り返しもよく使います。

これを説明する最適な例は、阿川佐和子さんが聖飢魔Ⅱのデーモン閣下に「へヴィメタってなに?」とインタビューしたケースです。阿川さんの著書『聞く力 心をひらく35のヒント』(文藝春秋)にも出てくるエピソードなんですが、ヘヴィメタで身を立てた人に「そもそも論」をぶつけてしまうのってすごいと思いませんか?

写真=iStock.com/Wenping Zheng
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聞かれたデーモン閣下は、おそらくヘヴィメタをまったくわからないであろう阿川さんに、懇切丁寧に説明を始めるんです。その説明は、ヘヴィメタに詳しい人が聞いてもとても新鮮だったり、本質的だったり、面白い解釈ができたりするから、インタビューとして名作になっています。

こう考えると、詳しくないからってブレーキを掛けてしまうのではなく、むしろ「知らない、わからない」状況って、雑談においては価値でしかないということだと思うんですよ。

野球を知らないからこそ聞ける話がある

【吉田】私自身にも経験があります。今は東北楽天ゴールデンイーグルスのゼネラルマネージャーの石井一久さんが、メジャーリーグで現役投手として活躍されていたとき、シーズンオフに「石井一久のオールナイトニッポン」が何度か放送されたんですが、その相手役がなぜか私だったんですね。

なぜ野球に詳しいスポーツアナじゃなくて、私なのか不思議だったんですけど、スタッフにいわせると、スポーツアナでは聞けない内容がたくさんあるんだというんです。野球を知らなくて不思議のない私が質問するからこそ、聞けることがあると。たとえ私がしくじっても後の仕事に影響がない、という理由もあったそうですが……。

もうひとつ、映画「アベンジャーズ」のプロモーションで来日していたサミュエル・L・ジャクソンさんにインタビューしたときのことも思い出します。

これはもともとあるアーティストさんのオールナイトニッポンで「サミュエル・L・ジャクソンの間に入っている『L』って何だ?」という話になって、なぜわざわざ「L」を入れるのか、という話題で盛り上がったんです。最後は「そのLをください」と私がいいに行くという流れになって……。いや、まともに考えたらすごく怖い話ですが、でも本当になぜ「L」が入るのかわからなかったし、最悪、めちゃくちゃ怒られたとしても、私の仕事がなくなることはなさそうですよね。

サミュエル・L・ジャクソンさんは本当にいい人で、面白がって説明してくれました。そんなこと聞く人、普通はいないですよね。おかげで「Lをください」という謎のミッションに「イエス!」と応えてくれたし、ファーストキスがいつだったか、なんていう、まず普通のメディアでは聞けない話までしてくれました。後で同行していたディレクターに聞いたら、後ろに立っていたマネージャーさんがすごく怖い顔をしていたらしいですけれど(笑)。