中止を決めれば、事業をやめる経営者が出てくる

もともと日本国内の消費は弱い状態が続いていた。特に2019年10月の消費税率引き上げ後は、大幅に消費が落ち込んでいた。免税手続きが可能なインバウンド消費はそうした消費の悪化を下支えする切り札として期待されてきた。特に地方の観光地などでは小売店や飲食店など経済の最末端に直接恩恵を与える外国人消費はなくてはならない存在になっていた。

それが新型コロナで状況が一変している。外国人による消費は事実上消滅し、国内在住者の移動も激減したことから、小売店や飲食店などが大打撃を被っているのだ。持続化給付金や家賃補助など国や自治体の政策もあって、とりあえずは売上減少を耐え忍んでいる事業者も少なくない。そこに「オリンピック中止」が仮に決まったとなれば、事業継続を断念するところが一気に増加することになりかねない。軽々に「中止」とは言えないのだ。

だが、仮にオリンピックを強行して、数百万人の外国人がやってくることになったとして、その経済的な効果は限定的だ。当初見込んだ4000万人の10分の1として、インバウンド消費額は1兆円にはるかに届かないだろう。

国内消費にいよいよブレーキがかかる

一方で、国内消費が盛り上がる期待は薄い。

10月以降、3月決算会社の9月中間決算が相次いで発表される。これまで「合理的に見積もることができない」として年間の業績見通しを明らかにしていなかった企業も、さすがに見込みを出すことになる。大幅な赤字や減益に転落する企業が相次ぐ見通しで、それを受けてリストラに乗り出す企業も出始める。年末の賞与を削減するのはまだ序の口として、人員削減などに踏み切るところも出そうだ。そうなれば、国内消費に急ブレーキがかかることになる。

政府はGo To キャンペーンなどで、宿泊業や飲食業の支援に力を入れているが、旅行や飲食に使うお金そのものを一気に締める動きが広がることになりかねない。