追加のスポンサー料負担に難色を示す企業も

開催してさらに大幅な赤字になれば、東京都の負担になる見通しだが、財政が豊かだった東京都も、ここへ来て財布が底をつく懸念が出ている。新型コロナで休業補償を実施したことで、自治体の「貯金」とも言える「財政調整基金」をほとんど取り崩すこととなった。

経済活動が冷え込んだことで、今後の税収が増える見込みも立たず、再度の休業補償を実施することも難しい状況に陥っている。オリンピックで追加の負担をするどころの話ではないのだ。

2020年1月2日の国立競技場
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組織委員会の収入は入場券収入に加えて、企業からのスポンサー料が大きい。延期になったことで、追加のスポンサー料負担を要請しているものの、新型コロナで業績が急速に悪化している企業も少なくなく、追加出資に難色を示すところが少なくない、という。国内での広告ができるスポンサー枠を取った中堅企業の社長は「もう十分、広告効果はあったので、本音では、もう降りたい」と語る。

7兆円以上のインバウンド消費が泡と消えた

政府は10月1日から全世界を対象に入国制限を緩和した。日本政府観光局(JNTO)の推計によると、日本を訪れた訪日外客数は、4月から7月まで前年同月比99.9%のマイナスが続いた。8月は若干増加したものの99.7%減になっている。

2019年1年間に日本を訪れた旅行客は3188万人と過去最多を更新した。外国人が日本国内で使ったお金は、推計で4兆8000億円。オリンピックが開かれる予定だった2020年は4000万人が日本を訪れ、消費額は8兆円に達するという見込みを立てていた。

1~3月こそ7071億円が使われたが、4~6月は観光庁の調査すら中止されており、ほぼゼロになったとみられる。このままでは年間で1兆円にも届かない可能性が高い。目論見から比べれば7兆円以上の消費が泡と消えたことになる。

2021年に何としてもオリンピックを開きたいという背景には、このインバウンド消費を何としても取り込まねば、日本経済の底が抜けることになりかねない、という危機感があるわけだ。