手洗いとアルコール消毒は何が違うか

手を石鹸で洗い流す「手洗い」は「洗浄」である一方、「消毒」に当たるのは「アルコール消毒」です。

医療現場では、目に見える汚れがあるときには手洗い、目に見える汚れがないときにはアルコール消毒、としています。

細菌やウイルスは手についても見えませんので、医療従事者は「患者さんに触れる前」「清潔操作(点滴などをするとき)の前」「患者さんの体液に触れた可能性があるとき」「患者さんに触れた後」「患者さんの周囲にある物品に触れた後」の5つのタイミングでアルコール消毒をするようにしています(WHOの推奨する5モーメントといわれるタイミングです)。

アルコールは、それ自体に菌やウイルスを破壊する作用があるため、手やモノに吹きかけてなじませたら、洗い流す必要はありません。

アルコール消毒は、手洗いと同等に感染症予防に効果的ですが、その際にも、いくつか意識していただきたいことがあります。

・「ワンプッシュ押し切った量」が適量

今は、たいていのスーパーや公共施設の出入り口に「プッシュ式のアルコール消毒液」が設置されています。

これを使うときに気をつけたいのは「ワンプッシュ押し切る」ことです。製品によって多少異なりますが、多くの製品がしっかりワンプッシュ押し切って出た量が適量となります。

しっかり押し切ると手からあふれそうな量になるため、「もったいない」「無駄遣いしては申し訳ない」と思っていた方も多いかと思います。しかし、実は「ワンプッシュ押し切って出る量」が、両手をアルコール消毒できる適量なのです。

・手首までなじませながら乾かす

ワンプッシュ押し切って手にアルコールを受け取ったら、乾くまで両手にしっかりともみ込みます。

よく、手をパタパタと振って乾かそうとしている人を見かけますが、それだと、両手全体に行き届かないままアルコールが揮発しているだけで、効果半減です。手首までしっかりと、アルコール消毒液をなじませるようにしてください。

いつ、どんなときに手を洗うか

最近は、家庭内感染が増えてきました。家庭内の感染を防ぐにも、ひとつに手を洗うことが大事です。

一人暮らしならば、外出から帰ってきたとき、トイレの前後、調理の前後、食事の前後で手を洗えばまず問題はないですが、家族と同居している人は、さらに頻度を上げたほうがいいでしょう。咳やくしゃみを手で押さえたり、鼻をかんだりした後にも手を洗います。同居人に高齢者がいる場合は、なおのことです。

とくに、新型コロナウイルスのように、症状が現れない期間(潜伏期間)が長い感染症が流行しているときは、「自分がすでに感染している可能性」を念頭に置いて、できるだけマメに手を洗うことをおすすめします。

もし症状が現れはじめたら、もはや手洗いの頻度だけの問題ではありません。部屋を別にする、食事を別々にとるなどの「自宅内隔離」が必要です。