業務改善で生まれた時間でほかのサービス
あとは、やらなくていいことをやめました。
毎日、テーブルクロスはアイロンがけしていたのですが、シワのばしスプレーと手袋で済ませるようにしました。おしぼりも袋から取り出してきれいに折っていたのですが、それもやめました(これは不衛生でもありました)。重たくて高そうなフランス製のお盆を、軽い木のお盆に変更したら、料理を出すのがだいぶ楽になりました。
短縮して生まれた時間で、ほかのサービスをする。そうやって、同じ作業をするにしても、効率のいい方法を考えると、劇的に作業時間は減っていきました。
こういう改善の積み重ねが、生産性を高めていくんだと実感しました。これはレストランだけではなく、あらゆる業種に応用できるんじゃないでしょうか。
優れた仕組みを持つ企業でバイトすれば、本業の改善ポイントがどんどん浮かんでくるはずです。バイトするだけで、生産性向上のタネは間違いなく見つかります。
ヒントになった「人時生産性」という概念
改善、改善、改善、とトヨタのカイゼンのように店を改善することに取りつかれた僕は、ある時、重大なことに気づきました。
「うちの店の席数じゃ、利益は頭打ちじゃね?」と。
その考えに至ったのは「人時生産性」について考えたからです。人時生産性とは、1日に生じた店舗の粗利益を、その日に働いていた従業員全員の総労働時間で割った数値です。それによって、従業員1人が1時間あたりどれぐらいの粗利益を上げられたのかがわかります。
式で表すと次のようになります。
高価格帯レストランでは、だいたいお店が25席、スタッフが10人というのが一般的です。顧客単価が2万円で1日1回転、原価率が35%。超長時間労働が常態化しているので、1日16時間働いているとすると、人時生産性は2031円になります。
飲食業界では2000~3000円くらいが平均的だと言われています。サイゼリヤはなんと倍以上の6000円を達成している店舗もあるそうです(『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』正垣泰彦著 日経ビジネス人文庫)。