第二&第三の応急手当とは?

続いて応急手当の第二は、収入を補塡ほてんする公的支援策の活用である。

収入が減少したのなら、それを補塡する制度をチェックしてほしい。10万円の特別定額給付金は、一家4人であれば40万円。それだけあれば、一般的な住宅ローンの補填分としては十分という世帯もあるだろう。

ただし、自分がどのような給付金の対象になるか探すのは意外に難しい。しかも、コロナ禍においては、自治体独自の制度も設けられていて難解だ。こまめに定期的に配布される市報や自治体HPなどをチェックするのもよいが、お勧めは一括で検索できるサイトの利用だ。

家計簿計簿アプリ「Zaim」の「わたしの給付金」は、居住地など属性を入力することで、ビックデータから自分が利用できる制度を確認できる。もちろん無料だ。

また、同社では、新型コロナ感染生活支援「手当・支援金シミュレータ」も4月から公開している。受給できるかどうかの要件の精査は必要だが制度のキーワードを知るには有効だろう。

また、同じく家計簿ソフト大手のマネーフォワードも「新型コロナウイルス支援情報まとめ」を公開している。事業者向け、個人向けで検索でき、後者は、フローチャートで支援ごとや一覧で探すことができるので便利だ。

写真=iStock.com/Picturesque Japan
※写真はイメージです

そして、応急手当の3はズバリ「節約」である。

なにせ、数カ月で、ボーナス払いの分を準備しなければいけないわけだから、「期間限定でガマンしてください」とアドバイスしている。節約のポイントは、短期決戦だけに、食費や水道光熱費、通信費、交際費、お小遣いなど、効果が出やすい「変動支出」に絞るのも一手だ。

ちなみに、筆者が20年超の家計診断キャリアでもっとも感心をした世帯の事例は、4人家族(子どもが小・中学生)の30代のAさん宅。なんと月の食費を1万5000円にまで抑えていた。

相談を受けたのは、今から10年以上前だが、この家庭の場合、食料品の買い出しは月3回のみ(つまり5000円×3回=1万5000円)。家計のひもをきつく締めている奥様いわく、1回に費やす費用が5000円なのが肝だという。「まとまったお金があれば、きゃべつ1個買い。お肉も鶏ひき肉1kg買いと激安スーパーで大量買いできますからね」とのこと。

家族全員の1日あたりの食費は計500円という計算になる。筆者は内心、「ご家族のみなさん。健康は大丈夫? 一家で食卓を囲み、おいしいものを食べる楽しみは?」と思ってしまったが、相談者にはあっぱれな覚悟があったのだ。

「とにかくマイホームが欲しいんです! だからそれまで徹底的に節約したいんです」

そんな強い意志があったのである。節約するのがイヤでも、Aさん宅のように、目標を設定した上での節約であれば、家族全員力を合わせて頑張れるのではないだろうか。

借金を返済するために新たな借金は絶対ダメ

以上3つの「応急手当」を経て、何とか冬のボーナスを乗り切ったとして、次に考えたいのは「予防対策」である。

こちらは、応急手当と並行して行ってもよいが、とにかく、今の生活を見直して、身の丈にあった家計にすること。そのためには、家計の健全性をチェックして、ムリなローンを組まない、収入を増やす算段を常にすることである。

とにかく、コロナ禍で家計の緊急事態を防ぐ対策として、やってはいけないのは、借金を返済するために新たな借金を作ること。そして、貯蓄を取り崩してしまうことである。収入減少が続いている間、積立投資を中断するのは仕方がないが、子どもの教育資金や老後資金用など目的を持って準備してきた貯蓄は死守したい。

理由は、いずれも1回やってしまうと際限なくなるから。

相談者が筆者のもとを最初に訪れる時、その表情は一様に期待に満ち溢れている。本当はお金のことで悩んでいるはずだが、「FPというお金のプロに相談すればなんとかしてくれるだろう」という楽観的な気持ちが大きいようだ。信頼されることはありがたい。だが、FPは魔法使いではない。相談したからと言って、劇的かつ速やかに家計が改善されるとは限らない。

「主人公」はあくまで各家庭。コツコツと地道な努力がいずれ実を結ぶ。常に、これを念頭に置いていただきたいと考えている。

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