コロナ禍の影響が本格化するのは冬のボーナス

そもそも、厚労省の定義では、ボーナス(賞与)とは、「定期又は臨時に労働者の勤務成績、経営状態等に応じて支給され、その額があらかじめ確定されていないもの」をいう。

法律で、ボーナス支給日まで決められている公務員ならいざ知らず(国家公務員の場合、夏は6月30日、冬は12月10日。地方公務員の場合、地方自治体ごとに設定)、民間企業は、成績や業績が悪ければ、支給されない。

しかも、ボーナスの対象となる期間は、夏(6月下旬〜7月上旬)のボーナスの場合、前年の10月から3月まで。コロナ禍の影響がまだ本格化する前で、大半の企業は春先に支給を決めている。

そして、12月に支給される冬のボーナスは、4月から9月までの実績が反映される。となれば、「夏のボーナスが出たが、冬は期待できない」という企業が続出する可能性が高い。

すでに、JTBは冬のボーナスを支給しない方針を決めたという。

落ち込んでいるビジネスパーソン
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一般的に、日本の企業は業績が低迷しても解雇せず、賞与などを減らして対応する傾向が強いものの、会社が潰れては元も子もない。給料やボーナスが減っても、失業するよりマシということか。

しかし、ボーナスを見込んで家計をヤリクリしてきた家庭は大変である。とくに、従業数が多い大企業は、年収に占めるボーナスの割合が高い。しかも、これまで安定的にもらえてきただけに、ボーナス払いで住宅ローンや自動車ローンを組んでいる人も少なくないはず。ボーナスの有無や減少に伴う家計への影響は大きいだろう。

冬のボーナス払いまでにやっておきたい「応急手当」とは?

それでは、冬のボーナス払いを乗り切るために、これからどうすべきだろうか?

実施すべき具体的な対策を、今から12月までの数カ月間の「応急手当」とそれ以降の「予防対策」に分けて説明しよう

まず、応急手当について。

第一に、住宅ローンにしろ、自動車ローンにしろ、借りている先(金融機関)に相談することだ。相談するのは、いかに支払いが大変かという愚痴や言い訳ではない。金融機関では、毎日のようにそのような相談を受け付けている。借り手が行うべきは、これからどのようにすれば返済を継続できるのか、具体的な返済方法に関する見直しに関する相談だ。

住宅ローンの場合、ボーナス返済分を貯められそうなら、ボーナス返済月を変更して、後ろにずらし、その間に準備する。また、返済額の内訳を変更して、ボーナス返済の金額を減らし、毎月返済の支払い額を増やす方法もある。さらに、これを機にボーナス返済を取りやめるのも可だ。

ただし、ボーナス返済を減額あるいは中止したことで、総返済額が増えたり、返済期間が長くなってしまったりといったデメリットもあるので要注意である。

首都圏を中心とした昨今の物件価格の高騰(とくにマンション)と住宅ローン金利の低さから、最長35年返済で借りられるだけ借りたという人が目立つ。中には頭金をほとんど作らないままローンを組むこともある。そうしたケースでは返済期間の延長が難しい場合もあるだろう。

また、住宅金融支援機構の「2019年度 フラット35利用者調査」によると、近年、利用者の平均年齢は上昇し、2019年度は40.2歳となっている。35年返済なら単純計算でも完済年齢は75歳。総務省の家計調査(※3)では、高齢夫婦無職世帯(いわゆる年金生活世帯)の収入は約27万円である。この収入から、さらに返済期間を延長して、本当に返済を継続できるのか。見極めは慎重にすべきだろう。

筆者はFPとして、今回のコロナ禍のように、業績や経済状況によって変動する怖さがあることから、基本的にボーナス払いの併用をしないことをお勧めしている。ただ、ボーナス払いを併用し、年間の返済額を増やすことで返済期間を短縮できるメリットもある。

公務員や大企業に勤務している方など(公務員であってもボーナスカットの時代だが)、頭ごなしに「ボーナス払いは悪」と決めつけるのではなく、個々の状況やリスクに応じて、具体的なシミュレーションをしてから、使い分けるのがベターだろう。

※3:総務省「家計調査報告(家計収支編)2019年(令和元年)平均結果の概要(2020年3月17日掲載)」