新型コロナウイルスの影響で、大学生はこれまでのような学生生活を送れなかった。就職活動で「学生時代に力を入れたこと=ガクチカ」を聞かれた時、何をアピールすればいいのか。千葉商科大学国際教養学部の常見陽平准教授は「コロナ禍に柔軟に対応して学生生活を送ったこと自体がアピールポイントになるのではないか」という――。
女性の就活生
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就職氷河期再来? かつてない不思議な就職戦線

「就職氷河期再来」

そんな言葉をメディア関係者や読者は期待しているのではないかと感じる瞬間がある。大学生の就活についてコメントを求められる際、記者は学生が右往左往し、苦労している様子を想定して質問してくる。

なんせ、新型コロナウイルスショックである。世界は昨年から、感染症の爆発的拡大と経済的打撃の深刻化という未曽有の歴史的危機に覆われている。この状況下において、大学生の就活も深刻化していると予想するのは、普通の感覚のようにも見える。ただ、新型コロナウイルスショックにより就職氷河期が再来したというのは、必ずしも正しくない。2022年卒の就活戦線の実態をレポートしつつ、いくつか論点をあげてみよう。

新卒採用市場の実態をみてみよう。2010年代半ばから続いていた売り手市場が一段落したのは事実である。リクルートワークス研究所の「大卒求人倍率調査(2021年卒)」によると2021年卒の大卒求人倍率は1.53倍で、2020年卒の1.83倍と比較して、0.3ポイント低下した。人事担当者、大学教職員、人材ビジネス関係者など新卒採用に関わる人は、売り手市場か否かの基準を1.6倍だと捉えている。その線を割ってはいる。ただ、バブル崩壊の後や、リーマンショック後の頃ほどは悪化しなかった。