アブラムシとクロオオアリは「ギブ アンド テイク」
仕事をする上で、自分(自社)の利益を優先するのは当然のこと。しかし、アリの生態を見ると、「本当に自分の利益を考えるのなら、相手の利益を考えるほうがいいのかもしれない」という気づきがあります。
例えば日本各地に生息するクロオオアリ。彼らは、アブラムシを食べようとするテントウムシを追い払う代わりに、アブラムシから甘い蜜をもらっています(ちなみに蜜はアブラムシのおしりから出ます)。つまり、クロオオアリはアブラムシと、「守ってあげる」「蜜をもらう」という「ギブ アンド テイク」の関係を築いて生き抜いているのです。
この関係を築くのは、昆虫同士だけではありません。身近なところでは、花の蜜を吸う昆虫と、花粉を運んでもらう植物の関係も「ギブ アンド テイク」と言えます。
また、ハチの仲間にはキャベツと「ギブ アンド テイク」の関係を築いているものもいます。キャベツにとっての天敵は、葉っぱを食い荒らすモンシロチョウの幼虫。その幼虫の天敵が、彼らの体内に卵を産みつけるアオムシコマユバチ。
キャベツは葉っぱがモンシロチョウの幼虫に食べられ始めると、かじられた部分からにおいを発してアオムシコマユバチを引き寄せます。アオムシコマユバチにモンシロチョウの幼虫の居場所を教えることで、結果的に退治してもらおうとするのです。
キャベツのにおいに引き寄せられたアオムシコマユバチは、モンシロチョウの幼虫に卵を産みつけることができるので、これも「ギブ アンド テイク」と言えます。
他の植物の成長を妨げるセイタカアワダチソウの末路
「ギブ アンド テイク」とは言っても、「できるだけ自分のテイクを多くしよう」という気持ちも沸くもの。植物の話が出たところで、次はセイタカアワダチソウという植物の話をします。
野原や空き地などに群生するセイタカアワダチソウは、「日本の侵略的外来種ワースト100」に指定されている外来植物。この植物、根から化学物質を出して他の植物の成長を妨げ(この作用を「アレロパシー」と言います)、辺り一面をセイタカアワダチソウだらけにしようとします。「できるだけ自分のテイクを多くしよう」とするのです。
しかし、成長が妨げられるのは他の植物だけではありません。化学物質がセイタカアワダチソウ自身の成長を妨げてしまうこともあります。
これを人に例えると、「他人を蹴落として利益を独占することに集中するあまり、自分の仕事に悪影響が及ぶ」みたいなことでしょうか。どうやら自分の利益だけを追求すると痛い目にあうのは、人も植物も同じのようです。
「奪い合う」より「与え合う」ほうが、結果的に甘い蜜を吸える……クロオオアリやセイタカアワダチソウの生態を見ていると、そんな気がしてなりません。