レジリエンスのルール5 「意味」を受けいれる

悲惨な出来事を乗り越えた人びとを調査した研究者が見いだした、まさに一番重要なことは何だっただろう? サウスウィックとチャーニーのレジリエンス論によると、「悲惨な出来事とそこからの回復を説明するうえで、当事者の宗教的信仰が、最も大きな力である」という。

では、もしあなたが信心深くなかったらどうすればいいだろう? 問題ない。もっと幅広く調査結果を見ると、重要なのは、何らかの形で人生の意義を見いだしていることだとわかった。そして多くの場合、それは他者との深い絆である。

精神的にレジリエントな人びとには、強い道徳観が共通して見られる。自分の生命が脅かされるような状況でも、自分のことばかりでなく、彼らはつねに他人を思いやるのだ。

こんな「ソーシャル・ディスタンス」はとってはいけない

というわけで、新ヴェネツィア市民たる諸君に強調したい。人とのつながりを通して、人生の困難の意味を受け入れること。まずはそこから始めよう。

危機的状況のサバイバーたちは、自分のことを一番に考えたから生き延びられた、とあなたは思うかもしれない。それは間違っている。生死にかかわる状況を生き抜いた人びとについて調査を重ねたところ、その結果わかったことはまさに正反対だった。

他者を助ける人間のほうが、生き残る可能性が高かったのだ。ほかの人を助けることこそ、自分の生存を確保する最善の方法だ。自分以外を気遣うことで、人はわれを忘れる。恐怖を乗り越えることができる。あなたはもはや被害者ではなく、救護者となる。

エリック・バーカー『残酷すぎる成功法則 文庫版』(飛鳥新社)

自分のリーダーシップとスキルが他者を勇気づけるのを見て、危機に耐えるあなた自身の集中力とエネルギーが高まり、好循環が生まれる。あなたが他者を励まし、彼らの反応があなたを精神的に支える。また、たった独りで生き抜いた人びとの多くは、彼らを待つ誰か(妻、恋人、母、息子)のことを想って生き延びようとした。

ヴェネツィアは島かもしれないが、あなたは違う。私たちはともに同じ危機に立ち向かっているのだ。

そう考えると、「社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)」は、ちょっと腑に落ちない表現だ。今、感染拡大を防ぐために重要なのは、人びとの「物理的距離」を取ることだ。そのいっぽうで私たちは、社会的にはできるだけ親密でいる必要がある。

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