緊急事態宣言が解除され、日経平均株価もコロナショック以前の水準まで回復しつつある。だが油断はできない。大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは「新型コロナショックとリーマンショックを比較すると、今回のほうが質的にはるかに悪性の不況だ。それには4つの理由がある」と指摘する――。
※本稿は、熊谷亮丸著『ポストコロナの経済学 8つの構造変化のなかで日本人はどう生きるべきか?』(日経BP)の一部を加筆・再編集したものです。
2020年6月17日に発表された衝撃的なデータ
4月の訪日外国人旅行者数が前年比▲99.9%のわずか2900人にまで落ち込み、過去最低となったが、5月はそれをさらに下回って1700人となり、記録的な落ち込みとなったのだ。
新型コロナショックの前には、日本政府は2020年に年間4000万人、2030年には6000万人の訪日外国人旅行者数を目標としていたが、もはや「夢のまた夢」である。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、日本経済にリーマンショック以上の打撃を与えるとみられる。図に示した通り、大和総研の試算では、2020年6月前後に世界各地でウイルスの流行が収束に向かうという極めて楽観的な「短期収束シナリオ」の下でも、日本の実質GDP(国内総生産)は、この問題が起きなかった時と比べて、33.0兆円(6.2%)程度、減少する。感染症の収束が2021年以降にずれ込むという「長期化シナリオ」では、わが国の実質GDPは48.8兆円(9.2%)程度、減少する(図表1)。