レジリエンスの高い社会の構築を急げ

人類が感染症を完全に「制圧」することは不可能である。

感染症の拡大とグローバリゼーションの進行はいわばセットであり、われわれは最終的な目標として、感染症に対するレジリエンスがある(耐性の高い)社会を構築しなければならない。

したがって、基本的な考え方として、感染症の拡大抑制と、社会活動・経済活動の持続可能性(サスティナビリティ)のバランスの回復を目指す必要がある。2020年6月初旬時点で、わが国は社会・経済活動の多大な犠牲を甘受し、感染症の拡大抑制を最優先してきたが、徐々に社会・経済活動の正常化を図らねばならない。

わが国の経済情勢は着実に悪化している。総務省が発表する労働力調査によれば、2020年4月の休業者数は過去最多の597万人に達した。これは、リーマンショック当時の4倍近い水準である。2020年通年の企業倒産件数は7年ぶりに1万件を超える見通しだ。また、2020年4月に帝国データバンクがまとめたシミュレーションによれば、売上高が半減する状況がこの先も続き、政府の支援策が見込めなければ、11カ月後には60万社強が倒産の危機に陥るという。

失業率1%増で自殺者1800人増

当たり前のことであるが、生命は経済よりも重い。経済はあくまでも国民が健康、幸福になるための手段であって、それ自体が決して目的ではない。

しかしながら、それを踏まえた上であえて強調したいのは、景気が極端に悪化すると、自殺者の増加によって、また違う角度から国民の尊い生命が奪われることもあり得るという点である。

図表2に、失業率と「経済・生活問題が理由の自殺者数」の推移を示した。わが国では失業率と自殺者数との間に一定の相関が存在する。深刻な不況に襲われて失業率が大きく上昇した際には、自殺者数も急増する傾向があるのだ。(図表2)

失業率の1%ポイント上昇で、自殺者1800人増の懸念も

過去の失業率と「経済・生活問題が理由の自殺者数」の関係をみると、失業率が1%ポイント上昇すると、驚くべきことに、自殺者数が1800人程度増加する傾向がある。