なぜリーマンショックよりも深刻なのか
新型コロナショックのほうが、リーマンショックよりも悪い点が4つある。
第一に、今回のほうが政策対応余地は小さい点が挙げられる。
そもそも、FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長が「利下げを行っても感染症は減らないし、サプライチェーン(部品供給網)の修復はできない」という趣旨の発言をするなど、今回は財政・金融政策というマクロ経済政策が非常に効きにくいタイプの不況である。
また、各国の政策発動余地も限定的だ。リーマンショック後に各国の財政状況が大幅に悪化していることに加えて、金利は米国でもほぼゼロになっているため利下げの余地もほとんどない。リーマンショックの際には中国が約4兆元(約57兆円)の大型経済対策を打って世界経済を支えたが、今回、中国は震源地であり、かつてのような体力も残されていない。
第二に、サプライチェーンへの打撃から、局所的な「スタグフレーション(不況下の物価高)」のリスクが存在する。つまり、今回は単なる需要ショックではなく、需要と供給両サイドの複合ショックなのだ。もし世界経済がスタグフレーションに陥ると、より一層政策手段が縛られてしまう。
第三に、グローバルな企業の過剰債務問題が深刻である。金融機関を除いた民間企業のグローバルなGDP比の企業債務は、2005年時点では72%だった。しかし、直近では93%まで上昇しており、企業が借金漬けの様相を呈している。現時点では新型コロナショックによって、主として中小の非製造業が打撃を受けているが、今後、大手製造業の信用不安に飛び火する可能性もあるだろう。この結果、リーマンショック当時同様、金融システム不安が再燃することが懸念される。
第四に、言うまでもなく、新型コロナウイルス感染症の拡大にいつ歯止めがかかるかについては、生命科学の領域に属する話なので、正確に予測することが困難である。
結論として、新型コロナショックは、リーマンショックと比べて、質的にはるかに悪性の不況であり、日本経済に戦後最悪の打撃を与える可能性があるだろう。