いずれのケースでも、わが国の実質GDPを押し下げる要因をみると、①世界経済の減速に伴う輸出の低迷、②自粛などによる個人消費の抑制、③インバウンドの減少、の順番に悪影響が大きいことが確認できる。

リーマンショック発生後の2009年の実質GDP成長率が▲5.4%であったことを勘案すると、新型コロナショックは日本経済にリーマンショック以上の打撃を与える可能性が高いといえる。

リーマンでは企業部門、新コロナでは家計も企業も総崩れ

筆者は、新型コロナショックとリーマンショックを比較すると、今回のほうが質的にはるかに悪性の不況だと捉えている。まず、極めて単純化すると、いわゆる「ヒト・モノ・カネ」という経済の3要素のなかで、リーマンショックでは「カネ」が、新型コロナショックでは「ヒト」と「モノ」の動きが止まった。リーマンショックの際には世界中の金融機関が打撃を受け、海外の景気が悪化し、その影響が日本に遅れて来たため、わが国の中小企業や国民の所得に悪影響が及ぶまでにある程度の時間がかかった。

一方、今回の新型コロナショックは非常にスピードが速く、とりわけ観光、運輸、外食、イベント、レジャーなど特定の業種が壊滅的な打撃を受けている。日本経済の部門別の影響をみると、リーマンショックの際には、主に企業部門の輸出や設備投資などが悪化したものの、個人消費はそれほど悪くならなかった。

しかし、今回は感染症拡大防止に向けた経済活動の自粛で家計部門が甚大な打撃を受けるとともに、海外経済の悪化で企業部門も苦境に陥っており、家計部門も企業部門も総崩れの状態である。通常の不況であれば、とりわけ自動車や家電などの耐久財消費に関しては、「ペントアップ・ディマンド(繰り延べ需要)」によって、景気回復期に入れば何とか減少分を取り戻すことができる。

しかし、今回苦境に陥っている、観光、運輸、外食、イベント、レジャーなどは、よしんば感染症が収束して景気がよくなったとしても、一人の人間が2倍から3倍、消費するわけにはいかないので、失われた消費は二度と戻ってこないだろう。