自分を騙せるのは自分しかいない

ここでいう快楽は「サウナと水風呂」の関係性に近い。

僕はサウナを12分5セットでこなすことを習慣にしている。サウナ室に12分間こもったあと、水風呂に浸かる。冷え切った水に身体を沈めた瞬間は、サウナ室で暑さをこらえて与え続けたストレスから一気に解放される。この快楽に溺れるのだ。

さて、試合当日を迎えた僕は、試合会場に入るまでは音楽を聴くこともあるけれど、それ以降は自分の世界に没入している。

その時点で恐怖の“量”はまったく減る気配を見せない。しかし僕は、そんなときだからこそ、自分に対してポジティブな話をする。自分を騙せるのは自分しかいないからだ。

「今までこれだけのことをやってきたんだ」
「毎日コツコツ練習してきたじゃないか」

そう自分自身に語りかける。だから大丈夫なんだ、と。

これをやっていると、恐怖心を抱えていても、過剰な恐怖を感じない領域まで集中力を研ぎ澄ますことができる。

入場直前まで音楽を聴く選手は「バカ」

入場直前まで音楽を聴く格闘技選手もいる。すごく失礼だけど「おまえらバカか?」と言いたくなる。

青木真也『距離思考』(徳間書店)

日頃から自分の入場曲を聴いているなんてヤツも信じ難い。いつも入場曲を聴いていたら、それは入場曲の意味を成さないし、本番で緊張感を失ってしまうんじゃないか?

そんな試合前の僕の心情を知ってか知らずか、「恐怖感とどう向き合えばいいですか?」とはよく聞かれる。

ありきたりな答えかもしれないけど、僕なりに考えた最善策は、「時間が解決する」と理解すること。これしかない。

時間は必ず過ぎていく。どんな人にも時間の経過は平等だ。だから、苦しいかもしれないけど、目の前のことから逃げずに、自分がすべきことをコツコツやり続けるだけだ。

しんどさを感じながら、それでもコツコツと努力を重ね続けるのは、なかなかつらい。でも、それを放棄した僕は、きっと試合には勝てなくなってしまうだろう。

だから、僕はこう信じている。

「いつか時間が過ぎたら、この恐怖感から解放される」

ひたすら逃げずに立ち向かうのだ。

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