働くことがゲームのように楽しい社会の実現

会社や組織づくりにおいても、コンセプトがどれだけしっかり確立されているかどうかが重要です。山本氏がCEOになって初めて手掛けた仕事も、会社のコンセプト、経営理念を一からつくり直すことでした。

「チャットワーク」によって最終的にどんな世界をつくりたいのか、その世界をどのように人々と共有していくのかということを、徹底的に突き詰めた結果、「チャットワークを通して、働くことがゲームのように楽しい社会の実現を目指す」という、新たなコーポレートミッションが生み出されたのです。

「そこに至る前に、まずはやりたいことのアイデアを片っ端から列挙し、それらを何のために行うのか一つひとつ検証していきました」と山本氏。原点に立ち返り、アイデアを徹底的に洗い出す行為は、これからの働き方を考える上でも有効な方法と言えそうです。

写真提供=KADOKAWA
チャットワーク株式会社・山本正喜CEO

能動的に選ぶと仕事はもっと楽しくなる

経営者になった今でも、山本氏の根底にあるのは「ものづくり」です。

彼は、ゲーム制作に夢中になっていた子どものころの「人に喜んでもらうことが楽しくて仕方がなかった」という思いを持ち続けたまま、学生時代に兄と共に会社を起業。これまで無我夢中になって、仕事に取り組んできました。

ところが社会に出てみると、「仕事が最高に楽しい!」という人は、意外にもとても少ないことにショックを受けたのだとか。

「人がゲームに夢中になるのは、それが楽しくて仕方がないから。ならば、仕事もそういうものにしていけばいいのではないか」

さらに、山本さんは続けます。

「今の世の中は、できること、お金になることばかりが重要視されている気がしますが、これを、自分がやりたいこと、社会の役に立つことに寄せていくことが大事だと思います。人は、目的が明確で創造的な仕事を自ら選択し、それが人の役に立っていると肌で感じられると、仕事が本当に楽しく感じられてくるものだからです」

チャットワークでは、働くことを楽しくしない行為はNG。「社員には、創造的な仕事だけをしなさいと伝えている」と言います。マネジメント的にも、社員の希望や適性を尊重し、会社の方向性と社員が人生を通して実現したいことが重なる部分で業務をオファー。本人に選択させることを意識しています。