食レポで「とろーり」が多く使われる理由

次はそれぞれの生地の食感について調べてみましょう。

硬さの比較図を見ると、みなさんもご存知の通りきのこのほうが圧倒的に硬いことが数値を見てもわかります。きのこはクラッカー生地、たけのこはクッキー生地でできていますから、断然たけのこのクッキー生地のほうがやわらかいことがわかります。(図表2)

実は食品の世界では「やわらかいほうが人気」になります。少しんだだけで、口の中ですぐに破砕され、味物質が唾液に溶け込み、味が広がりやすくなるからです。つまりは、クッキーの甘さおよびにおいをより強く感じるのです。これは、「絹豆腐」と「木綿豆腐」、「しっかりとした歯ごたえのプリン」と「とろけるプリン」などでも同じです。口に入れて、一気に味やにおいが口内に広がると、ヒトはとりこになってしまうのです。食レポなどで、「口溶けの良い◯◯」「とろーり」「とろっと」……など、やわらかい食感を表す言葉をよく耳にするのではないでしょうか。

子どもは「たけのこ派」になりがち

ガリガリとした食感も数値化することができます。(図表3)

生地に機械の歯を押し込んで、力のかかり具合と壊れ具合を計測しています。実際にきのこたけのこを食べているところを想像してみてください。歯で押しつぶしたときに、生地が砕けて、ガリガリと振動します。機械では、この振動の数を数えることで、ガリガリ感を見える化することができます。

たけのこのほうが、ガリガリ感が少なく、簡単に口内でほぐれることがわかります。ガリガリする振動数が少ないため「サクサク」とか「サクッ」と表現しても良いかもしれません。

さて、幼少期は噛む力が弱いために、やわらかい食品のほうが食べやすいというのは、自明のことです。

幼少期の嗜好性しこうせいは非常に興味深く、4~5歳くらいになると非常に甘いもの・濃いものを欲しがる時期があります。これはいずれ収まりますが、育ち盛りの体を維持するために本能がそうさせるのかもしれません。まだこの世の一部のおいしいものにしか触れていない子どもは、やわらかく味の広がりの良いものを好きになって当然で、きのこたけのこ論争ではたけのこ派になりがちです。

一方で、大人になると、男女差も顕著に現れます。一口の大きさや噛む力は、男性のほうが強いため、プロが食感を評価する際には、性差も気にしなければなりません。