料理を最大限に美味しく味わうにはどうすればいいのか。食についての雑誌『dancyu』(プレジデント社)の植野広生編集長は、「食べ方ひとつで食事の楽しさや味わいが変わる。例えば、ナポリタンの食べ方は一口ごとに変えられる」という――。

※本稿は、植野広生『dancyu“食いしん坊”編集長の極上ひとりメシ』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

「ひとりメシ」で編み出した究極の食べ方

グルメが美食を極める人たちだとすれば、食いしん坊はもっと広く食を楽しみたい。だから、立ち食いそばでもフレンチでも、焼肉でも鮨でも、A級もB級も関係なく楽しみます。料理、酒、食べ方、器、会話、景色、インテリア、音楽……さまざまな要素を楽しみます。もっと美味しく、もっと楽しくと。

そんな食いしん坊として、一番楽しいのは、実は「ひとりメシ」です。

いきなりですが、実際に「ひとりメシ」で編み出した食べ方の例をご紹介しましょう。これで、僕がどのような食いしん坊なのか、そして食べ方ひとつで食事の楽しさや味わいが変わるということを少しわかっていただけると思います。

まずはナポリタンの食べ方。「植野と言えばナポリタン」と言われるほど(僕の周りのごく一部ですが)、長年にわたって食べ方について研究と工夫を重ねてきました。いまや多くの食いしん坊たちが真似をしているという究極の食べ方です。いきなりこれを読むと「変態!」と思われるかもしれませんが、試しにやってみてください。同じ料理でも、味わいが本当に変わりますから。

ナポリタン
イラスト=中村隆

ナポリタンに、いきなり粉チーズとタバスコをふりかける人をよく見かけますが、それはもったいない。それでは、最初から最後まで同じ味、しかも粉チーズとタバスコとナポリタンが混ざり合って平板な味わいのまま食べ続けることになります。

僕は、まずはそのまま食べてプレーンな味わいを確認(「ストレート」と呼びます)。次に、フォークに粉チーズをふり、そのままスパゲッティを巻いて食べます。こうすると、口の中でナポリタンの味わいが広がり、その後から粉チーズの香りが追いかけて来ます。味わいにグラデーションができて、より複雑性を感じられるのです。これを「インサイド」と呼んでいます。