ナポリタンひとつとっても無限の楽しみ方がある

同様に、タバスコでも「インサイド」で食べます。さらに、粉チーズとタバスコをフォークにふる「ダブルインサイド」もあります。

イラスト=中村隆

次に、スパゲッティをフォークで巻いてから、粉チーズやタバスコをふります。「インサイド」とは逆に、粉チーズやタバスコの風味の後からナポリタンの味わいが追いかけて来ることになります。これは「アウトサイド」と呼び、当然ながら「ダブルアウトサイド」もあります。

さらに、「アウトサイド」には、粉チーズなどを上からふる「アップ」と、皿に粉チーズなどをふっておいてフォークで巻いたスパゲッティの下面につける「ダウン」というバリエーションもあります。

つまり、「ストレート」「インサイド」「ダブルインサイド」「アウトサイドアップ」「アウトサイドダウン」「ダブルアウトサイドアップ」「ダブルアウトサイドダウン」……と一口ずつ、異なる味わいを楽しむのです。

面倒くさいな、と思うかもしれませんが、一度試してみてください。たとえば一皿800円だとすると、いきなり粉チーズとタバスコをふりかけている隣の人は800円の価値でしか食べていないけれど、860円くらいの価値を楽しめますよ。

牛丼は「サラダのせ」と「紅ショウガ挟み」

牛丼は熱々のうちに食べるのが旨い。それはそれで正解なのですが、僕はそれだけでは満足しません。温度と食感の変化とグラデーションによって、さらに味わいを高めます。

たとえば、吉野家であれば、「牛丼アタマの大盛り、ご飯少なめ、サラダ、胡麻ドレッシング」を注文します。で、運ばれてきたら、まず牛肉だけ一口食べ(その店のその時の味付けを確認するため。店や時間によって微妙に異なるので)、ついで、胡麻ドレッシングで軽く和えたサラダを牛丼の上にのせ、すかさず、サラダと牛肉を5対5の割合でつまんで食べる。すると、口の中で冷たいサラダと熱い牛肉が混ざり合い、温度と食感の複雑な変化によって牛肉の味わいがさらに引き立つのです。

この「肉&サラダ合わせ」は、5対5が基本ですが、牛肉とサラダの割合を変えることで味わいと食感も変化します。牛肉を多めにすれば、温度が高くなり、牛肉の甘味が立ちます。サラダを多めにすれば、温度が下がり、牛肉の食感がアクセントになります。この微妙な変化が、一緒に食べるご飯の味わいも変えることになるのです。

ちなみに、ここに紅ショウガを加える高等技術もあります。①牛肉&サラダの上に紅ショウガをのせる、②サラダに紅ショウガを混ぜてから牛肉の上にのせる、③牛肉とサラダの間に紅ショウガを挟む、④牛肉&サラダとご飯の間に紅ショウガを挟む……。それぞれ異なる味わいになるのですが、初心者の方は、まずは①と④でその違いを試してみてください。口の中に最初に紅ショウガの香りと辛味が広がるのと、後から追いかけて来るのとでは、味の印象がまったく違うはずです。

さらに、七味のふり方まで加えると……、これはかなり複雑なマトリックスになるので、またの機会に詳しく説明しましょう。