かき揚げそばは「たてかけ」が基本

立ち食いそば屋でかき揚げそばを注文すると、そばの上にかき揚げがポンとのせられますよね。そうなると、かき揚げは全体的につゆを吸って一気に香ばしさが消え、うかうかしているとあっという間にドロドロになってしまいます。これはもったいない。

僕は「たてかけ」でお願いします。そばの上にのせるのではなく、丼の縁にたてかけるように置いてもらうのです。そうすれば、つゆの侵略を受けていない上のほうはサクサクのまま食べられます。そして、徐々につゆがしみてくる下へと向かって食べていけば、「ややしっとり」「しっとり」「どっぷり」と、つゆに浸っていく感じをグラデーションで楽しめるのです。

だったら、かき揚げは別皿に入れてもらって、別々に食べればいい、と思うかもしれません。しかし、それでは「そばとかき揚げ」になってしまいます。かき揚げそばは、かき揚げがつゆに浸ってしっとりした感じと一緒にそばを食べるのも醍醐味。天ぷらとして香ばしさ、つゆとの一体感、その両方を味わえる最上の手段が「たてかけ」なのです。

イラスト=中村隆

まずはつゆに浸ってないかき揚げをかじり、そばをすする。次に少しつゆがしみてきたあたりをかじってそばをすする。最後につゆでふやけて柔らかくなったかき揚げとそばを一緒に食べる。これぞかき揚げそばの正しい食べ方です(コロッケそばにも応用できます)。

ちなみに、卵もつけて天玉そばにする場合も、「たてかけ」が基本ですが、ポンっと落とした生卵をどうするかが大きな問題です。そのままにしておくと、黄身が割れて丼の中が卵味になってしまいます。そこで、レンゲをもらい、生卵につゆをかけて黄身の周りに白い膜をつくる(黄身を軽く保護)。それをレンゲの中に入れておく。これで、万一途中で黄身が割れてしまっても、丼全体に氾濫するのを防げます。もし、店にレンゲがなかったらどうするか。もちろん、かき揚げを割り、それで卵をすくって食べます。

かつカレーは「右から2番目」から食べる

かつカレーは、とんかつとカレーの融合です。とんかつのサクッとした旨さとカレーのスパイシーな味わいを楽しみつつ、融合の美味を楽しむものなのです。そのため、多くのかつカレーは、とんかつの手前半分くらいにカレーがかかったスタイルになっています。ロースかつの場合、通常は奥側が脂身、手前が肉になるように置かれています。つまり、脂身が多い奥の部分はカリッとした衣で軽やかに食べることができ、手前の肉部分にはカレーがかかって濃厚な旨味を楽しめるのです。天才的な構造ですね!

これをより美味しく食べるには、カットされたとんかつの「右から2番目」のパーツから左へと食べ進めていきます。

イラスト=中村隆

単体のとんかつの場合は、「左から3番目」あたりの肉と脂身のバランスが最適なところから食べ始めるのが王道ですが、かつカレーの場合は、カレーが加わることでこの部分の旨味が強くなってしまい、最初の一口としてはインパクトが強すぎます。そこで、脂身の少ない右側から脂身の多い左側へと食べ進むことで「淡→濃」という味わいのグラデーションを楽しむのです。