医療従事者の「生活」も蝕む新型コロナウイルス
医療従事者の間では、新型コロナウイルスの影響で病院の経営が悪化したことにより、賞与がカットされる方針が一部の病院で打ち出されるなど「心身ともにハイリスクな仕事ほど、経済的打撃も大きく、生活基盤もさらに不安定になっている」という傾向にさらに拍車がかかる状況となっている。
グテーレス国連事務総長がこう評価した日本の新型コロナウイルス感染対策。その屋台骨となっている病院、医療施設の関係者らに衝撃が走っている。
きっかけは2日の参院厚労委。日本共産党の小池晃書記局長が、新型コロナ対応で経営危機に直面している医療機関の支援措置を政府に要請。その際、東京女子医大(東京)の名を挙げ、同大が「夏季一時金を支給しない」と労組に回答したことを示した上で、さらに看護師の退職希望が法人全体の2割にあたる400人を超えている、と指摘したのだ。
日刊ゲンダイDIGITAL『東京女子医大看護師 感染リスク覚悟で対応もボーナスゼロ』(2020年7月8日)より引用
その後、東京女子医科大学病院は支給の方針を検討していることが報じられているが、日本医療労働組合連合会の調査によれば、夏のボーナスを引き下げた医療機関は約3割にのぼる(※1)。
(※1)NHK NEWS WEB『医療機関の3割で夏のボーナス引き下げ 退職者増えるおそれも』(2020年7月13日)
低所得層ほど、在宅勤務ができない
海外からも、在宅勤務を中心とした新しいワークスタイルが、かえって富の不平等を促進してしまう可能性を指摘する研究なども出始めている。
ケベック大学モントリオール校のジョルジュ・タンギー教授らの調査によれば、個人所得が高いほど在宅勤務者は増加しており、また給与所得が高い人ほど、在宅勤務ができる可能性が高いことが明らかになっている(※2)。言い換えれば、低所得層ほど在宅勤務ができず、経済リスクも感染リスクも高い構図が明らかになったのである。
(※2)THE CONVERSATION「Remote work worsens inequality by mostly helping high-income earners」(2020年5月10日)
これらはあくまでカナダの報告ではあるものの、ちょうど日本では所得の低い傾向のある介護従事者や飲食業従事者が、高い感染リスクに曝されながらしかし所得は少なく、また今後の生活基盤もきわめて不安定であることと相似形である。