テクノロジーは「不平等是正」のツールにもなる
これまでの歴史に反して、今回のパンデミックでは富裕層課税がなんら合意されることがなければ、人類の歴史は新たなフェーズに入ったことになるだろう。すなわち、破壊の後には一縷の希望としての平等が訪れていた時代が終焉し、破壊がさらなる格差と分断を加速させる時代の到来である。
世界の富豪でつくる団体「ミリオネアズ・フォー・ヒューマニティー」などからは、富裕層自らさらなる課税を求めるような声明も出されている(※5)が、これがグローバル規模の富裕層課税についての合意形成の呼び水になる可能性は残されている。ゲーテッドコミュニティーで暮らす富裕層やエリートたちにも、現代社会には声を届けられるツールが残されている。それぞれが遠く離れた場所で働いたりコミュニケーションでつながることを可能にした現代のテクノロジーは、パンデミックだけでなく富の不平等を克服するためのツールにもなりえるはずだ。
(※5)NHK NEWS WEB『世界の富豪83人「私たちに課税を」 新型コロナ』(2020年7月14日)
新型コロナウイルスによる感染者や犠牲者の報告が、毎日のように世界各地でなされている。そればかりか、倒産や廃業など、新型コロナウイルスがもたらしたもうひとつの災禍についても、その影響の大きさを多くの人がようやく知るところとなってきた。「このパンデミックと経済危機に無関係になれる人などいないのだ」——と、高みの見物を決め込む人にも声を届けていくほかない。