コロナは「富の不平等」を均してくれるのか

——だが現在の状況は、シャイデルやシーヴの悲観的な予想を大きく裏切ったようにも見える。「富の平等化」の可能性を持つまさかのイベントが発生したのだ。それが今般のパンデミックである。これをもって「奇貨」とするには甚だ不謹慎かもしれないが、今回のパンデミックが「アフター・コロナの世界」において富の不平等をいくらか均してくれる起爆剤になるかもしれない——そのように期待する人は少なからずいることはたしかだ。

はたして今回のパンデミックによる「社会秩序の大崩壊」の後にも、例に漏れず富の再分配はなされることを、歴史は証明してくれるのだろうか。

「テクノロジーの発展」という新しい要素

正直なところ、雲行きはきわめて怪しくなってきているといわざるを得ない。

というのも、現代社会の「テクノロジーの発展」が、歴史的には富の再分配を促してきた「大崩壊」のインパクトを緩和し、これを克服してしまった可能性が濃厚になってきているからだ。

冒頭で述べたとおり、高所得な職業・業種の人びとほど、在宅勤務の対応が可能であり、低所得な職業・業種の人びとは在宅勤務を選択する余地がほとんどないという非対称性が明らかになってきている。いわゆる「ステイホーム」が全世界的に「ただしい行い」としてコンセンサスを得ていたわけだが、実際のところその「ステイホーム」によって生じた経済的・社会的しわ寄せの多くは低所得層が被っていたのである。

ステイホームで得をしたのは高所得なサラリーマンだけではない。企業家や資本家たちも今回のパンデミックで莫大な利益を得た成功者が続々と登場した。プレジデントオンライン読者にも、愛用している方が多いであろうZoomやNetflixといった「ステイホーム最適化」型のサービス提供事業者たちはその典型である。彼らは文字どおり「時代の寵児」となり、瞬く間に巨額の富を築き上げた。

その他の億万長者については、新型コロナ関連の需要と深く関係しています。Zoomの設立者であるEric Yuan氏の資産はほぼ倍増して77億8000万ドル(約8400億円)になったそうです。SkypeとTeamsを所有するMicrosoftの前CEOで大株主のスティーブ・バルマーは、約50億ドル(約5400億円)を稼いでいます(興味深いことに、ビル・ゲイツの富は減っています)。Netflixの共同設立者でCEOのReed Hastings氏は、今年はじめから10億ドル(約1074億円)近く稼いでいます。他にも何十人もが、なんだかよくわからないうちに何億円もの資産を増やしていました。
GIZMODO『このご時世でももうかりまっか? 新型コロナなどどこ吹く風の富裕層たち』(2020年5月6日)より引用