仁藤さんの進むであろう道は、日本でもっとも賃金の安い産業 

彼女が通う大学は資格養成系だ。就職先は介護福祉関係になるだろうか。余計なことは言わなかったが、朝から晩までカラダを売り、巨額の借金を抱えて資格取得しても、とてもその労力と金額を取り返せるとは思えない。

コロナ以前、財務省は社会保障の削減に前向きだった。アフターコロナは現段階ではどんな社会になるかわからないが、そのまま社会保障削減の方向が継続されれば、労働者にまともな賃金は支払われない可能性が高い。ちなみに介護福祉分野の賃金は64業種中64位で、日本でもっとも賃金の安い産業となっている。

「大学と風俗、本当に大変だけど、自分では大変とは思わないようにしています。自己暗示は大事ですね。ほかにも頑張ってる子はいるって思いながら待機所にいるし、知らないおじさんの前で裸になるし、性的なこともする。大変だと思ったら、とてもできません。看護学科に風俗やっている女の子は何人もいるし、現実として同じ境遇の人がいるので、それは励みになります」

喫茶店を出ると、仁藤さんは池袋駅北口に早足で向かっていった。

清楚系美少女は中年男性に人気がある。これから別の街のデリヘルに出勤し、中年男性から「どうしてこんな仕事しているの?」「ブランド物が欲しいの?」みたいな質問をされる。その質問を適当にかわしながら、ときに本番強要されて、疲れ切って朝を迎える。日本学生支援機構から毎月お金が振り込まれる。1年後、864万円というとんでもない借金を抱えて就職する。

カラダを売る生活は大学卒業では終わらない

中村淳彦『新型コロナと貧困女子』(宝島社新書)

介護福祉業界は“団塊世代のために介護2025年問題を解決しよう”などといっている。戦後に生まれた団塊世代の男性は、いま思えば徹底的に恵まれた環境で生きてきた。当時の国立大学の学費は年間1万2000円であり、彼女はその150倍以上を支払っている。

現在の大学生の親世代、そしてもっと上の団塊世代は孫世代に対して徹底的に理解がない。まだ日本は恵まれた先進国だと思っている。彼らは自己責任論で貧しい者たちの声を封印して、仁藤さんに本番強要や「ブランド物が欲しいの?」なんて質問しながら発射する。性的行為をしてくれれば、再分配してあげてもいいという社会ができあがってしまっている。

彼女が就職するであろう介護福祉業界は、著しい高齢者優遇、現役世代軽視がまかりとおっている。仁藤さんがカラダを売る生活は、おそらく大学卒業では終わらない。

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