奨学金を月18万円借りても足りない

明治時代の遊郭を描いた1987年公開の映画『吉原炎上』では、吉原に人身売買で売られた女性の悲劇が描かれたが、正直、仁藤さんの状況はたいして変わらない。

「大学の学費は高いです。春に120万円納入で、秋に55万円なので教科書とか雑費を含めたら年間200万円近く。それが4年間です。奨学金は一種と二種を満額借りて、入学当初は足りるって計画が立っていたけど、全然無理でした。どうにもならなくなって、大学2年夏から風俗です。私の家の方針では、大学は義務教育じゃないし、行かなくても高卒で就職できるんだからお金は自分でやりくりしろって。奨学金一種と二種をあわせて月18万円を借りて、足りない分は高校時代のアルバイトで貯めた貯金を使っていました。1年ちょっとで尽きました。部屋は大学の寮みたいなところで4万円と安いけど、ほとんど大学と待機所で過ごしてるんで光熱費はかかってないかな」

母親だけのシングル家庭で高校生の弟がいる。母親は収入が少なく、弟と団地暮らしをしている。“親が面倒をみるのは義務教育まで”という方針で、大学以降は親からの給付はゼロである。在籍するのは学費の高い医療福祉系で、さらに一人暮らしをしている。医療福祉系は資格養成所なので出席は厳しく、授業や実習もたくさんある。

大学だけで十分忙しいなか、学費も生活費もすべて自分で稼げという環境で、稼げなかったら退学するしか選択肢がない。資格養成の大学なので資格取得できなければ、なんの意味もない、いままでの投資が水の泡となる。

男性経験は1人だけだったが、やるしかなかった

「高校3年のとき、大学のお金はどうしようか考えました。第一種と第二種奨学金を満額借りて18万円×12カ月で年間216万円。そのお金で学費を払って、生活費は自分で稼ごうみたいな計画でした。途中の4月と9月に授業料の支払いがあって、高校から続けていたアルバイトがあるから、なんとかなるだろうと思っていました。前のバイトは月によって違うけど、だいたい月8万円くらい。夏休みは10万円とか。年間100万円くらい稼いでいました」

年間100万円で家賃を払って生活するのは厳しかった。相対的貧困のラインに乗っているし、生活保護基準より圧倒的に低い。貯金を切り崩しながら1年半は乗り切ったが、挫折した。スマホでもっと高単価な仕事を探しているとき、風俗の求人広告が見つかった。それまで男性経験は1人だけ。とても自分ができる仕事とは思わなかった。でも、それしか選択肢がなかった。