「日本第一主義」の産経社説も、トランプ氏の姿勢を酷評
次に6月3日付の産経新聞の社説(主張)を読んでみよう。見出しは「米黒人暴行死 融和に徹し暴力を許すな」である。
産経社説は「ミネソタ州をはじめ十数州が州兵を動員し、首都ワシントンなど多くの都市が夜間外出禁止令を出す事態となった。異常と言うよりほかない。これだけの州兵動員は第二次世界大戦以来だ。抗議デモは英国など欧州にも広がった」と一部で暴徒化している抗議デモを指摘した後にこう主張する。
「トランプ大統領の発言も火に油を注いだ。5月29日にツイッターで、『略奪が始まれば銃撃も始まる』と投稿し、武力による制圧を支持すると受け止められた」
「トランプ氏は、人種間の融和に向けたメッセージを発信し、州政府や地方都市と連携して混乱を速やかに収拾すべきだ」
トランプ氏のアメリカ第一主義をまねて「日本第一主義」を主張してきた産経社説も、トランプ氏の姿勢を酷評する。しかも辛口の主張が得意の産経社説にしては珍しく「融和」を求めているから驚きである。
融和を求めながらも極左に対する警戒は怠らない産経社説
産経社説はこうも指摘する。
「だからといって、抗議活動に名を借りた略奪や放火などの暴力的な違法行為が許されるものではない。抗議はあくまで非暴力で行われるべきだ。黒人初の大統領となったオバマ前大統領が、『暴力を正当化してはいけない』と呼びかけたのは当然である」
「非暴力による抗議」が重要であることは産経社説の指摘の通りだ。産経社説らしくて興味深いのが最後のくだりである。
「トランプ氏は1日、デモが極左勢力に乗っ取られたと主張し、バー司法長官も『国内テロにはしかるべく対処する』と語った。背後関係の解明も欠かせない」
保守でも最右翼の新聞の社説だけはある。融和を求めて暴力を否定しながらも、最後には極左に対する警戒を怠らない。ここが産経社説の神髄かもしれない。