黒人を嫌う白人労働者の支持を得たいという狙い

毎日社説は続ける。

「米軍が動員されれば騒乱を極めた約30年前のロサンゼルス暴動以来となる。いまは平和的なデモがほとんどで軍が出る理由はない」
「『私は法と秩序の大統領であり、平和的な抗議者の盟友だ』とトランプ氏は言う。であれば、ことばだけでなく実行すべきだ」

確かにどの外電も「デモの多くは平和的だ」と伝えている。それにもかかわらず、トランプ氏は激しい言動を取る。なぜなのか。その裏には、黒人を嫌う白人労働者の支持を大きく得て、大統領選の勝利に結び付けたいとの意図があるからだろう。

毎日社説は指摘する。

「新型コロナウイルス危機の影響もある。失業者が増加し、黒人などの貧困層は生活苦に陥る。医療が行き届かない人も大勢いる」
「根深い人種対立と広がる社会的な分断を深刻化させず、どう解消していくか。それに取り組むのが大統領の責任だ」

トランプ大統領は新型コロナウイルス感染症が流行する中で、まともな医療を受けられずに苦しむ黒人の気持ちを慮るべきだ。それがアメリカを代表する者の責任であり、義務である。

トランプ氏を説得できるのは安倍首相ぐらいだが…

続けて毎日社説は「しかし、トランプ氏は分断をあおっている。社会の病巣に目を向けず、一部の暴動に責任があると言って問題をすり替えている」と指摘し、最後にこう主張する。

「このままでは米国の分断は、取り返しがつかない状態になる。独善がまかり通り、民主主義は弱まる。そうなれば『法と秩序』も崩壊するだろう」

アメリカから民主主義が消え去ると、日本に与える被害も甚大だ。そうなる前に、トランプ氏を説得しなければいけない。それができる立場にあるのは、世界の首脳でトランプ氏と最も仲がいいといわれる安倍晋三首相だろう。だが、安倍首相に本当にそれだけの能力があるだろうか。不安になる。