「逆張りの発想」で新しい販路を

こうした「攻めの姿勢」は、実は京都の街のあちこちで見かける。

新型コロナの影響で売り上げが激減している飲食店はテイクアウト商品を積極的に投入しているが、京都を中心に弁当製造販売を展開する穂久彩は、京都の中華料理の名店ハマムラ、人気洋食店浅井食堂とのコラボで「太秦(うずまさ)弁当村」なるテイクアウト専門店を5月22日、京都太秦にオープンさせた。

これまで、東映京都撮影所のキャスト向け弁当をはじめ、塾弁やイベント弁当を中心に手掛けてきた同社だが、新型コロナの影響で売り上げが激減。人気の飲食店とコラボすることで新しい販路を切り開こうとする。

ウーバーイーツなど宅配が勢力を伸ばす中、あえてテイクアウト専門の路面店出店という逆張りの発想で巻き返しを図る。

伝統の西陣織と現代アートのコラボが、休業中の改装で大人気

年々マーケットが縮小する伝統産業も、負けてはいない。西陣織で法衣や寺社仏閣の装飾品を手掛ける加藤太織物では、コロナの影響で、寺社の法要等の行事が軒並み中止・延期となり、通常ならば発注される本業の織物需要が急激に落ち込んでいる。

そこで、本業の傍ら手掛けてきた和雑貨等を扱う「京の匠」という一般向け小売部門に、京都で人気の壁画絵師・木村英輝(キーヤン)氏の図画を金襴きんらんで織り上げるタペストリーという新商品を投入した。

虎や鯉などを独特のタッチで書きあげる木村英輝氏の図画は、京都では見たことのない市民がいないほど街のあちこちに描かれ、広く知れ渡っている。伝統的な紋様にこだわらず、現代アートと西陣織の融合が、この際に内装を見直そうというホテル、旅館を中心に好調に売れている。

宿泊業界は賃貸に次々転用

宿泊業界では再編が始まっている。

京都で幅広く賃貸業を展開している不動産事業者は、3棟所有していた宿泊施設を早々にすべて一般賃貸物件に転用した。ここ数年、不動産事業者の宿泊事業参入が相次いだが、彼らはもともと供給過多になった際のリスクヘッジとして、賃貸物件に転用できる構造で建設したところが多かったのだ。そのためスムーズに転用を開始することができた。

同社が管理受託しているホテルも、続々と賃貸転用の申し出が続き、現在その作業に追われている。

「コロナ不況」という長いトンネルに突入し3カ月。厳しい環境の中で、生き残るために知恵を絞り、汗をかき、事業を見直し、業態を変え、たくましく生き残ろうとする姿が街のあちこちで芽吹き始めている。