ものづくりの街・京都の変化対応力

京都の「もうひとつ顔」も負けていない。

観光や大学の陰に隠れてあまり目立つことはないが、「ものづくり都市・京都」という一面を持っている。実は、京都の一番の産業は、日本電産、京セラ、任天堂、村田製作所、島津製作所、オムロン、ローム、ワコール、堀場製作所などを抱える製造業なのだ。

そんな製造業のひとつ、樹脂加工や金属加工の町工場を経営する株式会社ベルクシーの本田欣也代表取締役の動きは早かった。これまで関西を中心とする大手企業の取引が中心だったが、コロナ不況により売り上げが大幅に落ち込むことを見越して、4月から社内で自分たちができることの検討を始めたのだ。

新型コロナウイルスの飛沫防止対策のための「オフィス向け食堂用 飛沫防止パーテーション(固定式)」の製造に取り掛かり、新たな販路開拓に乗り出したのもそんな試みのひとつだ。

スタンド式に加え、デスクやテーブルの形状によってカスタムオーダーができる魅力があり、とくに他社にない固定式のアジャスターが好評だ。1枚1万9200円のパーテーションは次々と売れ始め、ホームページを見た大手アミューズメントパークのレストランからは1000枚単位の発注を受けた。

本田社長は語る。

「ひとつの金額は小さいが、できることからやっていくしかない。黙ってこの状況を見守っていたら、われわれ中小は先がない。他社にも同様のモノは山ほどあるが少しの差別化を図り、なにより攻める姿勢を忘れないことが大事」

「しゃあない」けど「なんとかしたる」

地元の経営者が顔を合わせると(最近は専ら電話だが)、一様に「ほんまさっぱりですわ。キツイわ」という会話から始まる。京都人はもともと独特の謙遜をする商習慣があり、「よう儲かってます」などとは口が裂けても言わない人々だが、今度ばかりは謙遜ではなく、実際に苦しいということがひしひしと伝わってくる。

のみを使って木材を削るようす
写真=iStock.com/AzmanJaka
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ただ、口では「しゃあない(仕方がない)」と言いつつも、彼らの目には「しゃあない」では済まさない力強ささと、「なんとかしたる」という、いい意味での「貪欲さ」と「諦めの悪さ」に満ちている。

苦境はチャンスとまでは言わないが、苦境こそ変化の好機を捉え、新たな胎動がそこかしこで起こっていることを強く感じる。