土産物屋、飲食店が「もう全然あかん」

観光産業といえばホテルが注目されがちだ。ホテルはビジネス需要なども多少あるが、観光客が来なくなって一番冷えあがっているのは、むしろ門前の土産物や飲食を取り扱う業種だ。ここがとりわけ厳しい。

清水寺門前にしても、嵐山渡月橋界隈にしても、地元の散歩客しかいないというとんでもない状況を抱え、休業、または営業店でも軒並み90%以上の売り上げ減少に悩まされている。

錦市場の土産物屋前に出された箸彫りの看板
写真=iStock.com/krblokhin
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銀閣寺門前や清水寺門前で土産物やシュークリーム、グリーンティーなどの飲食を扱う「京あみ」の松原公太郎代表は嘆く。

「もう全然あかん。給付金などでなんとか耐えているけど、国内観光客が戻るのが早くても秋以降なるわな。京都は夏あかんさかい。インバウンドに関してはもっと先。もはやインバウンドには頼れない。原点に立ち戻って、国内観光客を大切にして、とにかく耐えるしかあらへんわ」

売り上げ9割減の逆風下で進める事業見直し

全国の観光地の門前に直営店舗150店を展開する、業界最大手の株式会社寺子屋もまた京都に本社を置く中堅企業だ。

昨年度の売り上げ約100億円というニッチな業界の雄も、「緊急事態宣言」のため全店休業に追い込まれ、今年4月の売り上げは9割減という苦境に立たされている。

しかし、そんな逆風の中でも、同社は攻めの姿勢を崩さない。3月早々に融資を取り付け、今秋オープン予定の4店舗の計画は継続中だ。

これを機に社内の改革にも着手している。これまで社内で商品の製造、企画、デザインなどを担っていたが、体制の見直しで協力企業のメーカーへの切り替えも検討中だ。

商品も、いかにも観光地グッズという商品ラインナップから、今回のような外的要因の影響を受けない、毎日家庭で使えるような、いわゆる日常使いが可能な商品に重点を置き、同社のブランドのひとつ、「杵つき金ゴマ」の食品やベーカリー、和洋菓子などの商品の強化を積極的に進める。

併せて、観光地の客足が途絶えても売り上げを確保するために通販部門も強化。昨年、京都嵐山と清水にオープンし、人気を博している「スヌーピーショコラ」のオンラインショップも期間限定でオープンさせた。スクラップアンドビルド型で事業を拡大してきた同社ならではの対応の早さだ。