アリババ株の売却だけでは対応できない

ソフトバンクグループは、基本的に国内外の大手銀行などから資金を調達しその資金で事業を運営している。そうした手法は、いわゆる“高レバレッジ経営”と呼ばれる。“高レバレッジ経営”は、経済がうまく回っている間は効率の良い経営が可能になる一方、今回のように経済活動に問題が出ると、資金の確保などに困難が生じる可能性が高い。

そのため、投資家の中には、同社の財務レバレッジのリスクに懸念を表明する声が増えている。今後、世界経済がさらに混乱し投資先企業の経営が悪化する場合、同社の財務レバレッジは上昇しリスクが高まる可能性がある。その場合、わが国の金融機関の信用力に置く影響を与えることが懸念される。そのリスクは小さくはないはずだ。

これからソフトバンクグループは、自社株買いや社債の償還などのために約6兆円の資金需要が発生する見込みだ。資金を確保するために、同社はアリババ・グループの株式など資産の売却(総額4.5兆円)などで対応しようとしている。

ただ、資産の売却には限りがある。資金調達手段の1つとして借り入れの重要性は増すだろう。今後、同社がどのようにリスク管理を行ってビジョンファンドの運用を安定させ、キャッシュのアウトフローを抑えられるかは重要なポイントだ。

世界経済の下振れで金融システム不安が発生

将来は不確実であり先行きは断言できないが、もしコロナショックの影響が長引くと、世界的に経済活動の停滞は長期化するはずだ。そうなると、企業業績への不安も高まる。その場合、ソフトバンクグループが投資してきた企業に関して、想定を超える業績や財務内容の悪化、さらには経営破綻が発生するリスクは軽視できない。

そうした展開への懸念が高まり始めると、金融機関は貸倒引当金の積み増しなどを余儀なくされる。それは、銀行の融資能力を低下させる一因となり、わが国で金融システム不安の発生にもつながりかねない。

5月18日時点で、ソフトバンクグループが保有する株式の価値は28.5兆円とみられる。時価ベースでの保有資産規模を見ると、同社には追加の資産売却を行う余力があるといえる。ただ、株式の価格(価値)は世界経済全体の動向に大きく影響される。

同社の投資先には米国や中国、インドなどの企業が多い。米国を中心に世界経済の下振れ懸念が高まるようだと、ソフトバンクグループの財務内容などへの不安も高まらざるを得ないだろう。その場合、同グループから金融部門への悪影響の波及が懸念される。

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