歴史的な業績悪化が金融システムに与える危険性

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界経済は大きく混乱している。その影響が、投資会社としてのソフトバンクグループに莫大な影響を与えている。同グループの出資先のいくつかの企業の業績は大きく悪化し、それらの株価は急落に見舞われた。それに伴い、ソフトバンクグループは大赤字に転落することになった。

オンライン決算記者会見に出席したソフトバンクグループの孫正義会長兼社長=2020年5月18日
写真=時事通信フォト
オンライン決算記者会見に出席したソフトバンクグループの孫正義会長兼社長=2020年5月18日

今年1月以降、本格化したコロナウイルスの感染拡大によって、世界的に個人消費、自動車などの生産活動、観光など実体経済が悪化した。それにより、3月中旬には世界の株式市場は急落し債券市場も混乱した。そうした状況下、主に借り入れによって投資を行ってきたソフトバンクグループの信用力が低下し、クレジットリスクが大きく上昇した。

その後、世界の中央銀行が積極的に資金を供給したこともあり、とりあえず株価は持ち直した。しかし、実体経済はかつて経験したことがないほど冷え込んだままだ。ソフトバンクグループが投資する企業の業績が悪化し、企業価値が毀損されている。その結果、同社は創業以来最大の損失に陥ったのである。

ソフトバンクグループは、国内外の大手金融機関から多額の資金を借り入れ、その資金で投資を行ってきた。今後、同社の投資ファンドなどから損失が続く場合、大手金融機関の財務内容などに影響が及ぶ可能性がある。状況次第では、わが国の金融システムに重大なストレスがかかるリスクは排除できない。