飲食店の「5000人の名簿」の半分はでたらめだった
20代男性が出入りした5軒の飲食店では、4月30日から5月5日まで働いていた従業員や客ら計約5000人分の名簿を作成していた。感染拡大の防止の観点からだったが、電話番号や住所に虚偽の記載があり約2000人と連絡が取れていない。韓国の衛生当局はクレジットカードの使用履歴から客を割り出し、検査を進めている。
ソウルに隣接する大都市や人気の観光地・済州島(チェジュド)でも感染者が確認され、さらに感染は全国へと広がりそうだ。
そんな中、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は感染拡大を抑えたことを自画自賛する演説をしている。5月10日、就任から3年を迎え、「韓国は世界をリードする国になった。危機を最も早く克服した国だ。私は任期の最後まで偉大な国民と共に進んでいく」としたうえで、「全世界での感染拡大が韓国経済に与える影響は大きい。経済戦争の状態だ」と述べた。
文氏は、感染対策が争点となった4月の総選挙で大勝し、韓国の世論調査によれば支持率が71%まで上昇している。「1強」といわれて久しい日本の安倍晋三首相でさえ、自らの政治姿勢をここまで褒めたたえはしないだろう。
人間の心理を見抜くかのようなウイルスの厄介さ
読売新聞の社説(5月9日付)は「欧米の制限緩和 感染『第2波』をどう抑えるか」との見出しを付けて主張する。
「欧米諸国が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う行動制限の緩和に動き出した。流行の第2波を防ぎつつ、正常化を進めるには、指導者の慎重な舵取りが欠かせない」
「指導者の慎重な舵取り」は当然だ。問題はその舵取りの仕方である。
読売社説はヨーロッパのこれまでの規制についてこう説明する。
「新型感染症は欧州で猛威をふるい、イタリア、スペイン、フランス、英国では2万~3万人規模の死者が出た。各国は3月から、住民の外出制限や店舗・工場の閉鎖などロックダウン(都市封鎖)と呼ばれる厳しい措置をとった」
「違反者には罰則が科されるなど行動制限は法的な強制力を持つ。国民への自粛要請を柱とする日本の緊急事態宣言と比べ、より厳しい内容だ。その分、経済への打撃も市民生活の負担も大きい」
厳しい措置や強制力の行使には打撃と負担がともなう。だからこそ、早期の緩和が求められると読売社説は主張したいのだろうが、新型コロナウイルスはそんな人間の心理を見抜くかのように制限を緩めると、再び感染の芽を伸ばす。ならばどうしたらいいのだろうか。