日本は韓国の事態を参考に出口戦略を進めるべきだ
これほど「他山の石」という故事がピッタリ当てはまるケースも珍しい。韓国で起きた新型コロナウイルスの感染再拡大の問題である。
他山の石とは、中国最古の詩集『詩経』にある「よその山から出た粗悪な石でも己の宝石を磨く砥石として役に立つ」との記述に基づくもので、つまらない他者の言動でも自分を向上させる糧となるという意味だ。
5月10日、韓国政府は首都ソウルのナイトクラブを訪れた客を中心に新型コロナウイルスのクラスター(感染集団)が発生したと発表した。韓国では、ウイルスの感染拡大を抑止できたと判断し、6日に制限を緩和したばかりだった。
日本でも感染者数の少ない地方都市で外出制限の緩和が始まっている。政府は緊急事態宣言を解除するにあたり、韓国の感染再拡大を他山の石とするべきである。
一般的に新種のウイルスは人口の6割が感染して抗体(免疫力)を獲得しない限り、終息はしない。外出制限の緩和についてWHO(世界保健機関)も「緩和をゆっくりと着実に行うことが、経済活動の再開と感染の再拡大への対応の両面で重要だ」としている。
20代男性がソウルの5軒の飲食店をはしごして感染を広める
ソウルからの報道を総合すると、まず5月6日に20歳代の男性客の感染が最初に確認された。彼の行動を韓国衛生当局が詳しく調べたところ、1日夜から2日未明にかけてソウルの繁華街の梨泰院(イテウォン)にあるナイトクラブや居酒屋など計5軒の飲食店を訪れていた。5軒の従業員や客に次々と感染が広まり、85人の感染者が確認された。問題の男性は自粛から解放され、ついうれしくなったのだろう。マスクも着用していなかった。
韓国では3月22日、政府が市民に不要不急の外出の自粛を要請し、客が密集するナイトクラブに対しては、運営の中止を求めていた。しかし、新規の感染者が減少傾向に転じ、4月20日には客と従業員の名簿作成と発熱チェックを条件に制限を緩和。この時点からナイトクラブは営業を再開していた。5月6日からは感染の拡大を防ぎながら日常生活を送る「生活防疫」へと移行していた。