夫の在宅勤務、唯一のメリットは…

もっとも、いい変化も報告されている。「平日は深夜帰宅、週末は燃え尽きていた夫が、子どもと遊べる時間を持てるようになった」「すれ違い夫婦の会話が増えた」「子どもが手伝いをするようになった」「夫が料理に目覚め、家事育児に協力的に」「長時間勤務や通勤ストレスから解放され、健康的になった」などなど。暗いニュースばかりが続く日々だが、旧弊の固定観念や価値観がリセットされる機会になったのは、唯一のメリットといえるかもしれない。「自分にとって本当に幸せな日々は、どういうものか」を考えるきっかけになるかもしれないからだ。

そもそも、自粛生活で噴出している声は、これまでも変革を叫ばれながらも放置されてきた課題ばかりなのだから。都市への一極集中・それに伴う住宅問題・長時間勤務・満員電車通勤・家事育児の夫婦分担のひずみ・子育て女性の社会進出の難しさ・育児休暇に対する社会の無理解・リモートワークの環境不備・ハンコ社会……。これらを放置してきたツケが、いま次々に、顕在化しているといえるのではないか。

プリント配布にこだわる近所の公立小学校

特に今回痛感したのは、日本社会のデジタル化のカメのごとき遅さだ。夫婦ともに在宅勤務になった家庭では、「同様世帯の激増で、マンションのWi-Fi速度が低下し、添付ファイル受信に15分、送付には30分かかる」とぼやいている。「自粛したいが、上司のハンコがないと作業が先に進まない」という声も多い。

公立学校のあまりの無策ぶりも、今回驚きの的だった。習い事や塾が続々と苦肉の策としてZoomなどでレッスンを試みる半面、まるで昭和のまま時が止まったままなのが公立校だ(すべてではないだろうが)。ちなみに私が住んでいる区は、偶然にも教育熱心な区として認知されており、区外からの転居者も多いのが特徴だ。しかし、そんなご立派な名声をよそに、突然の休校以降、学校から届いたのは数枚のプリントのみ。オンライン授業など夢のまた夢だ。欧州やアメリカ、韓国などが「休校措置」宣言の数日後にオンライン授業体制を整えたと聞くと、昨今の「公立校でもICT教育を推進しています」アピールはどこの国の話だったのかと首をかしげざるをえない。