ドイツではヘリコプターのような車が実用化へ
空飛ぶクルマ、英語で「Flying Car」は、各国で開発が進んでいて、すでに実用化が間近いプロジェクトも多い。「クルマ」という呼び名がついているが、基本的には小型の航空機であり、地上も走行できるタイプは少ない。
先頭を走っているのは、ドイツのベンチャー、「ボロコプター」だ。形はヘリコプターのように見えるが、回転する大型のブレードは備えておらず、円形に18個の小さなプロペラを配置した「マルチコプター」と呼ばれるタイプだ。
マルチコプターは、それぞれのプロペラの回転数を変えることで制御を可能にしており、ヘリコプターに比べて製造や操縦が容易である。騒音はヘリコプターの7分の1。ボロコプターは2016年に有人飛行に成功し、2020年代前半の実用化を目指している。
中国ではイーハンが有人飛行に成功している。大手航空メーカーではアメリカのボーイングやベル、ヨーロッパではエアバスが、空飛ぶクルマを開発している。ライドシェアのウーバーは、空飛ぶクルマを使ったエアタクシーの実用化を目指している。
日本も負けじと、2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」で、「世界に先駆けた“空飛ぶクルマ”の実現のため、年内を目途に、電動化や自動化などの技術開発、実証を通じた運航管理や耐空証明などのインフラ・制度整備や、“空飛ぶクルマ”に対する社会受容性の向上等の課題について官民で議論する協議会を立ち上げ、ロードマップを策定する」と定められた。
これに従って設けられた官民協議会には、官からは通産省と国土交通省、民からは機体メーカーをはじめ、サービス展開を目指す事業者まで幅広く参加している。
日本では技術を持ったボランティア集団が登場
協議会では、空飛ぶクルマを次の三点で定義している。
第一に電動化。従来のエンジンに比べて部品点数が少なくなり、製造コストが下がる上、メンテナンスも容易になる。CO2の排出や騒音など、環境に与える負荷も少ない。
第二に自動操縦。人為ミスがなくなって安全性が向上すると同時に、パイロットの人件費が不要となる。空では、人が急に飛び出すことがなく、自動車の自動運転より取り組みやすいという専門家が多い。
第三に垂直離着陸。滑走路のような大型のインフラ整備が不要となる。
この3つの条件は、いずれも運行コストの大幅な引き下げに役に立つ。航空業界ではこうした機体をeVTOL(electric Vertical Take‐Off and Landing Aircraft、イーブイトール)、電動垂直離着陸機と呼んでいる。
2018年12月に協議会が取りまとめたロードマップでは、2023年の事業開始が謳われている。空飛ぶクルマは空想の世界ではなく、現実のものになろうとしている。