「面白いモビリティを作りたい」と100以上のアイデアを集め…

福澤は幼いころ、身の回りの電気機器やおもちゃがなぜ動くのか不思議に思い、『これはきっと魔法だ』と思っていた。やがて小学校の理科の実験で、モーターには動く原理があること、それは多くの人の知恵と思いで生まれたことを知って感動し、それ以降、モノ作りに夢中になった。大学ではロボットを研究し、トヨタに入った。

共同代表の福澤知浩氏
共同代表の福澤知浩氏(写真提供=カーティベータ―)

「身の回りのあらゆるモノを見るたびに、誰のどんな知恵や思いが入っているのだろうかと思いを巡らせます。世界中の人たちがつながっている気がして、じんわりと幸せな気持ちになります」

福澤は中村と話すと、たちまち意気投合した。

「最初は、『面白いモビリティを作りたい』という話でした。ぼくも同じ気持ちを持っていたので、『作ろう、作ろう』と盛り上がったのです」

業務の時間外に仲間を集め、「何か面白いことをやろう」と2012年9月、有志団体「カーティベーター」を結成して議論を始めた。名前は、car(自動車)と、cultivator(開拓者)を掛け合わせて作った造語である。休日にみんなで合宿をして、「人はなぜ、移動するのか」という根源的な問い掛けから考えてみたりもした。やがて「海を潜るクルマ」とか、「部屋ごと移動できるクルマ」とか、100以上のアイデアが集まった。グループ結成から半年を掛けて議論し、翌2013年に選んだテーマが、「空飛ぶクルマ」だった。

それは、ワクワクする“夢”だから

中村は、空飛ぶクルマを選んだ理由について、「ワクワクする“夢”だから」と言う。「いまはできないことを、できるようにしようというところが、夢だと思っています」と語る。

福澤も、「一番、楽しそうだったからです。まだ見ぬ景色を見たり、地上では行きにくいところに行ったり、飛んでいる過程を楽しんだりしたい」と話す。

映画では、『バック・トゥー・ザ・フューチャー』をはじめ『アイ、ロボット』や『マイノリティ・リポート』『フィフス・エレメント』『ナイトライダー』など、数々の人気SF映画に登場する「空飛ぶクルマ」は、子どもたちだけでなく大人が見てもカッコいい。空を飛ぶことを歌ったヒット曲で言えば、赤い鳥の「翼をください」、荒井由実の「ひこうき雲」、中島みゆきの「この空を飛べたら」など、数え上げればきりがないほどである。空を飛ぶのは、人類の普遍的な夢であり、憧れなのだ。中村と福澤たちは、その夢の実現に向かって歩き出した。

エンジニアのほか、投資会社や広告会社からも参戦

その頃、海外ではドローンが様々な用途で使われ始めていた。ドローンは無人航空機の総称だが、一般的には4個から8個程度のプロペラを備えたマルチコプターを指すことが多い。

最新のドローンにはGPSや電子コンパス、加速度センサーが搭載され、自律的に飛行することができる。プロペラが複数あるため、もしひとつが動かなくなっても、ほかのプロペラでカバーするなど、安全対策を強化することも可能だ。

カーティベーターでは、ドローンの大型化をはかる方向で、検討を進めていった。

有志団体「カーティベーター」のメンバーたち。さまざまな業界から人材が集まっている
写真提供=カーティベータ―
有志団体「カーティベーター」のメンバーたち。さまざまな業界から人材が集まっている

2014年にはクラウドファンディングで資金を募ると、メディアにも取り上げられ、知名度が上がってきた。その結果、一緒にやりたいという人たちも増えてきた。この年には、5分の1スケールの試作機を開発した。2018年には1分の1という実物大の実験機も製作した。

カーティベーターは活動拠点を、愛知県豊田市と東京都の2カ所に置いた。メンバーは約100人。このうち、6割を占める技術領域担当メンバーは自動車や航空業界のエンジニアやデザイナー、4割の事業領域担当メンバーは投資会社やコンサルタント会社、広告会社や商社などに勤めていて、様々なスキルを持っている。中には自家用のヘリコプターを所有しているメンバーもいる。

あくまでボランティアとしての参加であり、本来業務の終わった平日の夜や週末を利用して、活動を続けている。