夢の「空飛ぶクルマ」が現実になろうとしている。トヨタ自動車も出資する会社「スカイドライブ」は、2023年までに空中を100キロで飛行し、地上を60キロで走る自動車を発売予定だ。事業として本当に飛び立てるのか。ジャーナリストの中村尚樹氏がリポートする――。

※本稿は、中村尚樹『ストーリーで理解する 日本一わかりやすいMaaS&CASE』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

有志団体「カーティベーター」のメンバーたち。さまざまな業界から人材が集まっている
写真提供=カーティベータ―
有志団体「カーティベーター」のメンバーたち。さまざまな業界から人材が集まっている

「空飛ぶ自動車」は本当に贅沢品か?

国連は現在、SDGs(Sustainable Development Goals、エスディージーズ)と呼ばれる持続可能な開発目標を掲げ、貧困や不平等の解消、ジェンダーの平等や教育対策、さらには働きがいやクリーンエネルギー対策など、2030年までに達成すべき17のゴールと169のターゲットを提示している。

国連広報センターは、このSDGsを子どもたちに楽しみながら理解してもらおうと、クイズに答えてコマを進める世界共通のすごろくを作り、ウェブサイトで公開している。その問題のひとつが、興味深い。

Q:エネルギーの節約や地球の保護のための方法として現実的でないものは次のうちのどれですか?
(a)自転車
(b)電気バス
(c)空飛ぶ自動車

ゲームの遊び方を見ると、クイズの正解者はもう一度、サイコロを振ることができると書いてある。しかしウェブサイトに、正解は用意されていない。いずれも簡単な質問だからということだろう。

消去法で考えれば、「空飛ぶ自動車」がエネルギーの節約や地球の保護にふさわしくないということになる。

国連は、空飛ぶクルマはエネルギーを浪費する贅沢品と考えているのだろうか。私は必ずしも、そうは思わない。有線電話の整備が遅れた地域でスマートフォンが導入されて便利になったように、道路整備の遅れている地域では、空飛ぶクルマが、道路建設による環境破壊を防ぐ切り札になるかもしれない。

この話題は、2019年10月に開かれた東京モーターショーのシンポジウム「空飛ぶクルマは実現するか」に登壇した大阪府商工労働部産業化戦略センター長の中原淳太に教えられたものだ。というわけで、本稿では空飛ぶクルマを取り上げる。