大手メーカーは「難しいだろう」との見方だが…

日本で航空機を製造している大手メーカーの技術担当者に、カーティベーター・スカイドライブ製の空飛ぶクルマについて、どう評価するか聞いてみた。

「ベンチャーには勢いがあり、空飛ぶクルマの機運を盛り上げるにはいいと思います。しかし、現実的には飛行の安全性を担保しなければなりません。航空機製造の国際認証を取得し、型式証明が発行されるには、ベンチャー企業だけでは難しいだろうと、我々は思っています」

なかなか厳しい言葉だが、それは中村も承知の上である。

「その通りだとは思っています。まずは情報をオープンにして、社会実装するところまでは共に歩む姿勢が重要ではないかと思います」

空飛ぶクルマ開発の事業主体となるスカイドライブでは、2023年の販売開始、2030年の自動運転化を目指している。そこでスカイドライブは2020年4月1日、三菱航空機元副社長の岸信夫をCTO(最高技術責任者)として迎え入れた。岸は三菱重工、三菱航空機で、旅客機などの開発に37年間従事し、この間、先進技術実証機プロジェクトマネージャー、国産初のジェット旅客機MRJ(現SPACEJET)のチーフエンジニアを歴任した航空機開発のエキスパートである。

航空機に必要不可欠な型式証明の取得や安全性の検証、システムインテグレーションなど、岸の持つ専門的な知識や経験が、空飛ぶクルマの実用化に活かされると期待されている。

タクシーや山間部・離島での活用に期待

空飛ぶクルマが実現したとして、利用のイメージについて、福澤に聞いてみた。

中村尚樹『日本一わかりやすい MaaS × CASE 最前線』(プレジデント社)
中村尚樹『ストーリーで理解する 日本一わかりやすいMaaS&CASE』(プレジデント社)

「所有するというよりは、MaaSのイメージで、空飛ぶタクシーとしての利用が最初ではないでしょうか。例えば川や海があるため、道路が直線で結ばれていない二点間で、地上交通なら1時間から2時間かかるところが、空飛ぶクルマなら十数分で行ける場合、需要はあると思います。その場合の料金も、タクシー料金よりは多少高い程度に収まると思います。あるいは観光でも、ロープウェーに乗るような手軽さで楽しめるのではないでしょうか」

都会だけでなく、交通が不便な山間地などでも需要はありそうだ。日本は島国だから、離島と本土とを結ぶ移動でも活躍しそうだ。より手軽なドクターヘリとして、あるいは地上の交通が寸断された災害復旧時の対策にも役立つだろう。

利便性と経済性を兼ね備えたエアモビリティが、MaaSの新たな選択肢としてスマートフォンのアプリ画面に登場する日も、そう遠くはないと思えてきた。

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