起死回生の一手が局面を悪化させる

バックギャモンの試合でも、駒の動かし方にミスはなかったはずなのに、サイコロの目がよくないことが続いて、気がつけばだんだん劣勢に追い込まれていた、というケースがあります。自分では最善を尽くしているはずなのに、それでも不利な局面になっていった。それは流れが悪いからだと考え、とりあえず納得したとします。

矢澤亜希子『運を加速させる習慣』(日本実業出版社)

そうすると、どこか勝負どころで起死回生の手を打って、試合の流れを変えようなどと考えるわけですが、そういう企みはたいてい失敗します。起死回生の一手とは、言葉を換えれば冒険的な手のことですから、そこに無理が生じて、ますます局面を悪くしてしまうことが少なくないのです。

もし、自分にとって望ましくない展開が続いたら、まずやるべきことは自分が打ってきた手が本当に最善手だったかを冷静に検証することです。最善だと思っていたのは勘違いで、どこかに判断ミスがあったのかもしれません。

また、検証してもミスが見つからなかったら、そのまま最善手を打ち続ける努力をすべきです。バックギャモンだけでなく、私たちの日常生活においても、自分には何の落ち度もないのに事態がよくない方向へ向かうことはあるものです。そういう場合は、慌てたりせずじっと辛抱して、とにかくベストを尽くすことを続ける。流れが悪いと思い込んで気持ちが沈んだり、事態を打開しようとしたりして無理をすると、ますます敗色が濃くなるだけです。

勝者にミスがないという考えは大間違い

では次に、試合後の反省方法についてお話します。

試合に負けたとき、私は解析ソフトを使って棋譜を分析し、敗因について考えています。勝ったときにも同様に棋譜を検証します。それは、結果的には勝っていても、その内容が100パーセント正しかったとはかぎらないからです。

バックギャモンにおいてほとんどのミスは、局面に対する理解が不足していることによって起こるといっていいでしょう。プレーヤー間の実力の差とは、この理解力の差と表現してもいいくらいで、実力が伯仲するトップレベルのプレーヤー同士の対戦では、そのわずかな差が勝敗を分けることになります。